研究者Ｕさんの聖書講座のシリーズです！
ユダヤ教の聖書解釈を専門にしている「研究者U」です。
今回は、ヘブライ語聖書（いわゆる「旧約聖書」）の「創世記」における、
「カインとアベル」
の物語について見ていきましょう。
目次
カインとアベル：弟殺しの物語
ミシェル・コクシー『アベル殺し』
（プラド美術館、マドリード）
「人間の誕生」と「エデンの園での出来事」
が中心でした。
今回は、アダムとイブの子どもである、
「カイン」と「アベル」
について見ていきます。
まずは、聖書に何が書かれているのか見ていきましょう。
神様に相手にされなかったのを怒って、
弟のアベルを殺しちゃったわけマボね……。
なぜカインはアベルを殺したのか？
「嫉妬」が原因？
バルトロメオ・マンフレディ『アベルを殺すカイン』
（美術史美術館、ウィーン）
マンボウちゃんは、何だと思いますか？
じゃないマボか？
アベルの捧げ物だけが神に受け入れられて、
カインの捧げ物は拒否されていましたし……。
これは、「聖書本文には書かれていない」パターンだと、
マンボウちゃんは見抜いたマボ！
「『嫉妬が理由で殺した』、とは聖書本文には書かれていない」
が正解マボね？
殺人の原因が「嫉妬」だと言い切れない理由の１つではあります。
今回は、加えて、もう１つの理由について考えていきましょう。
ここで、聖書本文の、創世記４章８節を見てください。
カインが弟アベルに言葉をかけ、二人が野原に着いたとき、
カインは弟アベルを襲って殺した。
「おい、アベル～、ちょっと一緒に野原行こうぜ～」
みたいな感じだったマボかねえ。
とはいえ、実際には、カインが何と言っていたのかはわかりませんが……。
聖書の「欠損」
すると、写本の中には、何らかの理由で一部が「欠損」しているものもあります。
そしてなんと、
「カインが弟アベルに言葉をかけ」
の記述の後に、欠損が見られる写本があるのです。
カインが弟アベルに言葉をかけ、 （欠損） 二人が野原に着いたとき、カインは弟アベルを襲って殺した。
という描写があるということは、
カインはアベルに何かを言っているはず。
しかし、ここでカインがアベルに語りかけたであろう言葉は、
聖書のどこにも書かれていません。
そして、ここに欠損が見られるということは……。
欠損しているのは「カインとアベルの会話」
ということでしょうか！？
この欠損した部分で２人は会話を交わしており、
そこには、カインがアベルを殺すことになった決定的な理由が描かれていたのかもしれない、
と考えることもできるわけです。
ひょっとしたら、「嫉妬」以外の理由が書かれていた可能性もあるわけマボねえ。
そして、この考えが正解である可能性は、実際はあまり高くないでしょう。
しかし、あくまで可能性の１つとして、
「ここにアベル殺人の重大なヒントがあったのでは？」
と夢を見ることも、また楽し、というわけです。
「アダム」「イブ」「カイン」以外の人間たち……むむむ？
エデンの東へ去るカイン
「カインとアベル」の物語で、
気になるシーンを取り上げてみましょう。
この人たち……誰！？
ピエトロ・ノベッリ『カインとアベル』
（国立古典絵画館、ローマ）
①アダム ②イブ ③カイン
の３人しか生きていないはずです。
だったら、カインを攻撃しようとする人の心配なんて要らないはずですよね。
さらに、「カインは妻を知った」とありますが……。
は、はて……。
世界中の神話や伝承において、「兄弟」にまつわる物語はよくあります。
おそらく、「カインとアベル」の物語についても、
とある兄弟物語の伝承を、創世記の文脈に当てはめたので、
つじつまが合わなくなってしまったのでは、
と考えることもできるわけです。
まとめ
- カインがアベルを殺した原因が「嫉妬」だとは、聖書の中では明言されていない。
- 聖書の記述には、時折「欠損」により「抜け落ち」が生まれている可能性がある。
- 「アダム」「イブ」「カイン」の３人しか生きていないはずのシーンで、他の人物が登場するのは、「創世記の文脈とつじつまが合わない形で、他の伝承が取り込まれたから」と考えることもできる。
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参考記事
創世記
出エジプト記
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