今回は、「キリスト教絵画のお約束」シリーズ第2弾。
キリスト教絵画の中の「輝き」
に注目していくよ。
頭の後ろの輪っかは何ですか?
ラファエロ
『牧場の生母』
(美術史美術館、ウィーン)
ジョット
『キリストの磔刑』
(スクロヴェーニ礼拝堂、パドヴァ)
『聖フランシスコ・ザビエル』
(神戸市立博物館、神戸)
もともとはキリストの神性を表すものだったのが、
神聖な人々の頭部にも描かれるようになっていった。
……実際、本来ならばイエスや聖霊、天使などの「天上界の存在」のみに描かれるべき光輪は、
しだいに、「地上界の存在」であってもマリアやヨセフ、聖人のように
神の恩寵を与えられた人間を画面の中で他から一目で区別するための「目印」として、
画家の裁量で臨機応変に描かれるようになっていったのである。
中村麗(2012)
『これだけは知っておきたい「名画の常識」』
(小学館101ビジュアル新書)
もっとも、バーゲンセールみたいにいろいろな人たちへ大盤振る舞いされちゃったせいで、
光輪だけで人物を見分けることは難しくなってしまった。
ジョット
『キリストの磔刑』
(スクロヴェーニ礼拝堂、パドヴァ)
だったら、自分自身が輝けばいい!?
「だったらいっそ、一番重要な人物が最も光り輝いているように描けばいい」
という発想も生まれた。
人間は発光しないまぼよ。
ティントレット
『マルタとマリアの家のキリスト』
(アルテ・ピナコテーク、ミュンヘン)
発光しています。
ティントレット
『 動物の創造』
(アカデミア美術館、ベネツィア)
中心にいるのは、神そのものだ。
さらに自然法則を捻じ曲げていくと、より神性が際立っていく。
ホントホルスト
『キリストの降誕』
(ヴァルラフー・リヒヤルツ美術館、ケルン)
暗闇の中で生まれたばかりのキリスト自身が光源となって輝いたり。
ホントホルスト
『大司祭の前のキリスト』
(ナショナル・ギャラリー、ロンドン)
「お約束」の1つ、
というわけですねえ。
まとめ
- 頭の後ろの光輪は、イエスや天使、神聖な人々のアトリビュート。
- 登場人物そのものを不自然なほどに輝かせることで、神聖さをアピールすることも。
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参考文献
- 中村麗(2012)『これだけは知っておきたい「名画の常識」』(小学館101ビジュアル新書)