ラファエロ
『聖母子と幼児聖ヨハネ』
(ルーブル美術館、パリ)
ジョット
『ユダの接吻』
(スクロヴェーニ礼拝堂、パドヴァ)
「キリスト教絵画のお約束」
がわかったら便利だとは思わないかい。
よろしくお願いしますまぼよ~。
アトリビュートって何ですか
シンボルとアトリビュート
について説明してくよ。
シンボルは使いますけど、こっちは聞きなれない言葉ねえ。
西洋絵画を鑑賞していて、描かれている人物が誰が誰だか分からないといった経験がないでしょうか。
そんな時に知っておきたいのが「アトリビュート」です。
「アトリビュート」とは日本語では「持物(じぶつ)」と訳されますが、
その人物が誰なのかを示す目印になる、
まさに持物(もちもの)=帰属物のことです。
平松洋(2015)
『名画の謎を解き明かす アトリビュート・シンボル図鑑』
(KADOKAWA)
ラファエロ
『聖母子と幼児聖ヨハネ』
(ルーブル美術館、パリ)
幼子2人はイエス・キリストと、洗礼者ヨハネだ。
さて、どっちが洗礼者ヨハネだと思う?
「洗礼者ヨハネはラクダの毛皮をまとっている」
というお約束を知っていれば、
右下の幼子が洗礼者ヨハネだとわかる。
「あ、洗礼者ヨハネだ!」
とすぐ気づくようになる。
レオナルド・ダ・ヴィンチ
『洗礼者ヨハネ』
(ルーブル美術館、パリ)
洗礼者ヨハネ。
ブリューゲル
『説教をする洗礼者ヨハネ』
(セプミュヴェゼティ美術館、ブダペスト)
今度は人の数が多いよ。
もうわかるようになったまぼよお。
このように、
絵画の中の登場人物を見分けるための目印
となるものがアトリビュートだ。
シンボルとの違い
アトリビュートとシンボルの違い
はわかるかな。
うーん、シンボル、象徴。
……わからないまぼねえ。
たとえば、聖霊としての鳩は鳩だけを描いても、シンボルであれば成立します。
一方、ヴィーナスのアトリビュートとして番(つがい)の鳩が描かれますが、
単体で鳩だけを描いても、
この鳩は、もはや誰も明示しておらずアトリビュートとは言えません。
つまり、シンボルは単体で機能し、アトリビュートは常に明示する人物が必要なのです。
平松洋(2015)
『名画の謎を解き明かす アトリビュート・シンボル図鑑』
(KADOKAWA)
レオナルド・ダ・ヴィンチ
『最後の晩餐』
(サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院、ミラノ)
最後の晩餐のとき、イエスは
「これは私の体である」
と言った。
ただパンを持っている人を見ても
「あ、この人、イエス・キリストだ!」
とはならないよね。
パンが並んでいても、どれがイエスかわかりません。
「アトリビュート」はそれがその場で誰を示しているのかがわからないといけない、
ということ。
パンはイエスの体の「シンボル」だけど、
イエスの「アトリビュート」ではない、
ということだ。
まとめ
- キリスト教絵画は、お約束を覚えておくとわかりやすい!
- その人物の目印となるものを「アトリビュート」と言う。
- それ単体で何かを表すものを「シンボル」と言う。
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参考文献
- 平松洋(2015)『名画の謎を解き明かす アトリビュート・シンボル図鑑』(KADOKAWA)