今回は「フェルメール」シリーズ、最後の第3弾です。
前回までの記事を確認したい人は、こっちをチェックしてくれ~。
「フェルメールの絵画の、さまざまなアレゴリー」
について見ていこう。
目次
アレゴリーってなんですか
そんなの知ってたら、マンボウちゃん、とっくに説明する側に回っていますマボ。
「寓意(ぐうい)」
と訳される。
絵の中の事物に、
目には見えない「意味」を託しているのがアレゴリーなんだ。
たとえば、宗教画において十字架は、イエスを処刑するための道具だったことから、
イエスへの信仰そのものを表すようになった。
それはすなわち、十字架が、
信仰という抽象的な目に見えない概念を、目に見えるようにするための、
いわば擬人像のような役割を果たしたということである。
このように、生き物であれ事物であれ、
人の姿ではないが、絵画のなかで擬人像のような役割を果たしているものを
「シンボル(象徴)」
という。
(中略)
目に見えない抽象的な概念や思想を目に見える形で表す手法を
「アレゴリー(寓意または寓意画)」
という。
中村麗(2012)
『これだけは知っておきたい「名画の常識」』
(小学館101ビジュアル新書)
「絵画の中に描かれたモノが、別のなにかをたとえる」
ことを指す、というわけだね。
と言われたらマンボウちゃんはどう思う?
そうなると、絵画にどんどん興味が出てくる。
当時、フェルメールに絵画を発注していた市民たちは裕福で教養もあった。
そんな彼らを満足させるために、教養を前提とした謎解きのような絵画が求められたということ。
船と手紙(『恋文』)
フェルメール『恋文』
(アムステルダム国立美術館、アムステルダム)
『恋文』
となっている理由はなぜか。
気にならない?
手紙を持っているだけです。
「船の絵」
が描いてある。
船と手紙。この2つが合わさると恋文になる。
これがアレゴリー。
虚栄―ヴァニタス(『真珠の首飾りの女』)
フェルメール『真珠の首飾りの女』
(ベルリン国立絵画館、ベルリン)
『真珠の首飾りの少女』に似たタイトル。
「現世の世界で自分を着飾るだけの行為は虚しいものだ」
ということで、真珠はそのまま虚栄を表すこともある。
虚栄はラテン語で「ヴァニタス」と言う。
この女の人はただただ、
「真珠のネックレスをつけて喜んでいる」
だけに見えますけど。
窓の横には鏡がある。
死後の世界まで持ち越すことはできない
= 虚栄に過ぎない
というわけだ。
ピーテル・クラース『ヴァニタス』
(ベルリン国立絵画館、ベルリン)
「ヴァニタス」、
つまり「現世の空虚さ」を説いて、
謙虚に生きることを推奨する側面があった。
プロテスタントとは、腐敗したカトリック世界への反発として、
「キリスト教の原点に立ち返ろう!」
という運動から生まれたものだからね.
天秤ー法と正義の象徴『天秤を持つ女』
フェルメール『天秤を持つ女』
(ワシントン・ギャラリー、ワシントンD.C.)
人の魂の重さを天秤で量り、天国行きか地獄行きかを振り分ける。
そこから天秤は、
「法と正義の象徴」
ともされた。
初期イタリア語の「理性」は「正義」を意味しており
(中略)
イタリアでは裁判所は、現在でも「理性の殿堂」と呼ばれるのです。
理性と言う言葉はまた、
「計算、計測」
という言葉も持っていました。
中世イタリアでは「理性の書」とは会計簿のことです。
このことが、天秤のイメージを裁判に結びつかせた理由なのかもしれません。
裁判とは、いずれの側の主張が正しいのかを天秤で計測することだったのです。
森征一、岩谷十郎編(1997)
『法と正義のイコノロジー』
(慶応義塾大学出版会)
天秤は水平を保っている。
「虚栄、ヴァニタス」を表す真珠は、横に打ち捨てられたままだ。
「虚栄を遠ざけ、正義を重んじる」
ことを説いているのかもね。
覚えましたよ~、おらおら~。
アレゴリーの宝庫(『信仰の寓意』)
磔刑、十字架
フェルメール『信仰の寓意』
(メトロポリタン美術館、ニューヨーク)
たしか、アレゴリーが寓意って意味でしたよね。
覚えましたよお。
この絵画はアレゴリーの宝庫なんだ。
「部屋の中に十字架も飾っている」
あたりに信仰の深さがうかがえる。
ガラス球
女性が見つめているのもこのガラス球だ。
これは、人間の論理的思考力のシンボルと言われている。
ちなみに、このガラスに室内の様子が描きこまれているのがわかるかな。
すごい表現力だよね
リンゴ、蛇、地球儀
リンゴは原罪を表す。
そして潰れたヘビは、悪に対する勝利。
「信仰そのもの」
を表すと言われていたそうだ。
まとめ
- 絵画の中に描かれたモノが、別のなにかをたとえているのを「アレゴリー」と言う。
- フェルメールの絵画には、さまざまなアレゴリーが込められていた。
- キリスト教や当時の市民たちの教養を前提とした要素が、絵画に散りばめられている。
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参考文献
- 中村麗(2012)『これだけは知っておきたい「名画の常識」』(小学館101ビジュアル新書)
- ノルベルト・シュナイダー(2000)『フェルメール』 (タッシェン・ニュー・ベーシック・アート・シリーズ)
- 森征一、岩谷十郎編(1997)『法と正義のイコノロジー』(慶応義塾大学出版会)
- 『男の隠れ家美術シリーズ 静謐と光の画家 フェルメール』(三栄書房)(2018)