今回は
ヘンてこな「奇想の画家」
シリーズの最終回。
前回までの記事はこちらをチェックしてくれ~。
目次
狩野一信:ジャカジャカ音がなるような激しさを見よ!
徐々に西洋画の影響が光や陰影の表現に表れてくる。
狩野一信(かのうかずのぶ)
は、ご存じ狩野派から出てきているが、その絵画は強烈だ。
狩野一信
『五百羅漢図(ごひゃくらかんず)』
(増上寺、東京)
色彩もさることながら、なんですかこの絵は!
お腹から仏さまが!
そこにはキテレツな図像があふれるように飛び出してくる。
だけど、そのインパクトの奥にある緻密な技量も要注目だ。
鈴木其一:目をとらえて離さないその青
鈴木其一(すずききいつ)だ。
鈴木其一は情緒的というよりはむしろ理知的な構成の絵を描くんだけど、
そこには現実離れした色彩感覚が現れる。
鈴木其一
『夏秋渓流図屏風』
(根津美術館、東京)
金ぴかの背景に鮮やかな青の川が映えますねえ。
一度見ると忘れられそうにないです。
一方で植物には写実的な雰囲気があったりもする不思議な絵だ。
鈴木其一
『百鳥百獣図』
(キャサリン&トーマス・エドソンコレクション)
歌川国芳:奇想の浮世絵師
でありながら、武者絵に加えて、
西洋絵画の影響を受けた風景画家でもあるのが、
歌川国芳(うたがわくによし)。
歌川国芳
『相馬の古内裏(ふるだいり)』
平将門の遺児・滝夜叉姫(たきやしゃひめ)が、骸骨を出現させるという戦闘シーン。
そういえば、夢枕獏(ゆめまくらばく)の『陰陽師』シリーズにも出てきたね、滝夜叉姫。
価格:792円 |
歌川国芳
『国芳もやう正札附現金男 野晒悟助』
猫好きの画家
としてもよく知られている。
こんなところに猫ちゃんが。
河鍋暁斎:無限のイメージとその技量
河鍋暁斎(かわなべきょうさい)
は狩野派の流れを汲んでいながら、そこに留まらないさまざまなイメージの絵画を描いた。
7歳で歌川国芳に入門し、10歳で狩野派の門も叩いている。
優秀ねえ。
『画鬼』
だったそうだ。
河鍋暁斎
『地獄太夫と一休』
(イスラエル・ゴールドマン・コレクション)
地獄太夫は、
一休さんでおなじみの一休宗純(いっきゅうそうじゅん)の弟子になった
と言われる遊女だ。
レッツ・ダンシン!
よくよく見るとサンゴ礁に七福神があしらっているんだ。
ニクいよね。
河鍋暁斎
『三味線を弾く洋装の骸骨と、踊る妖怪』
(イスラエル・ゴールドマン・コレクション)
こっちでも骸骨が三味線を。
とにかく、なんでも描ける才人が暁斎。
描き方もイメージも無限に溢れてくる、そんな画家だ。
月岡芳年:浮世絵と西洋画のハイブリッド!
月岡芳年(つきおかよしとし)。
後世に与えた影響がよくわかります。
月岡芳年
『月百姿』
「きよみかた空にも関のあるならば 月をとゝめて三保の松原」
『月百姿(つきひゃくし)』
という、月をテーマに百の絵画を描いた芳年のシリーズの1つ。
錦絵と呼ばれた浮世絵の鮮やかな色彩に、
伝統的な日本画には見られない西洋画の人物造形が入り混じる。
月岡芳年
『義経記五条橋之図(ぎけいき ごじょうおおはしのず)』
だけど、『奇想の画家』として出てきたこれまでの画家の奔放さに比べると、
なんだかきちっとしているというか、理論的な雰囲気があるというか。
だけどその上で、やっぱりベースは浮世絵だよね。
まとめ
- 狩野一信:キテレツな図像の五百羅漢図
- 鈴木其一:一度見ると忘れられないビビッドな色使い
- 歌川国芳:西洋絵画の影響を受けた奇想の浮世絵師
- 河鍋暁斎:描き方とイメージ、無限大!
- 月岡芳年:西洋絵画の影響を落としこんだ東西のハイブリッド画家!
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参考資料
- 佐久間恵(2012)「これから来る! 注目アーティスト 狩野一信」、山下裕二監修『ゼロからはじめる! 一夜漬け日本美術史』(美術出版社)
- 辻惟雄(1970)『奇想の系譜』(美術出版社)
- 美術検定実行委員会編(2008)『西洋・日本美術史の基本』(美術出版社)
- 山口晃(2012)『ヘンな日本美術史』(祥伝社)
- 山下裕二監修(2019)『奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド』(日本経済新聞社、NHK、NHKプロモーション)
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湯原公浩編(2014)『別冊太陽 日本の心214 浮世絵図鑑 江戸文化の万華鏡』(平凡社)
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