【奇想の系譜】②  白隠/伊藤若冲/曽我蕭白/長沢芦雪╿江戸時代

こんにちは、はてはてマンボウです。

 

前回に引き続き、

 

ヘンな絵ばっかり描いている奇想の画家

 

についてのお話です。

前回までは、奇想の画家とは何かに始まり、

 

岩佐又兵衛(いわさまたべえ)、

 

狩野山雪(かのうさんせつ)

 

を扱ったね。

梓

 


 

 

奇想の画家 ① 「桃山~江戸時代初期」 岩佐又兵衛、狩野山雪

前回までの記事はこちらをチェックしてくれ~。

 


 

さて、今回はどんな人が出てくるんですか。
それは見てのお楽しみ。
梓

 

白隠慧鶴:禅宗の放つ自由な画風!

臨済宗のお坊さん

白隠慧鶴(はくいんえかく)は

 

臨済宗(りんざいしゅう)の中興の祖

 

禅宗のお坊さんだ。

梓
禅宗には、お坊さんの画家もいらっしゃっるって話でしたよねえ。

 


 

 

仏教の宗派ってなんですか ④座禅と公案の世界「禅宗」

禅宗について知りたい人はこちらをチェックしてくれ~。

 


 

遊び心溢れる絵を描いた彼こそが、後に出てくる

 

若冲(じゃくちゅう)、

 

蕭白(しょうはく)、

 

芦雪(ろせつ)

 

などに影響を与えたとも言われている。

梓

 

白隠慧鶴

『達磨図』

(萬壽寺、大分)

 

うわあ、遊びで描きました、みたいな絵ですねえ。

 

額は広いし、襟は飛び跳ねてますし。

この絵はよく見ると下書きもたくさん残っているんだけど、

 

それらもすべてこの勢いの一部のように感じられるよね。

梓

 

公案と禅画

白隠慧鶴

『隻手』

(久松真一記念館、岐阜)

 

はて。この絵は片手を描いているだけみたいですけど。

 

これがどうしたんですか。

禅には、

 

悟りを導くための問答として

 

「公案(こうあん)」

 

と呼ばれるものがある。

 

難しいお題を出して、その答えを考えさせるというもの。

梓
なぞなぞみたいなものですかねえ。
白隠の考えた公案に

 

「隻手音声(せきしゅおんじょう)」

 

というものがある。

 

両手を叩くと音がするよね。

梓
そりゃそうでしょうねえ。
では

 

片手では

 

どんな音がするかな?

梓
まぼ。

 

か、考えさせられますね。

 

何か意味があるんですか。

その意味を自分で考えるのが公案。

 

そんな目でさっきの「隻手」の絵を見てごらん。

梓

 

 

うーん、途端に意味があるように思えてくるような。
『隻手』と名付けるだけで、

 

さきほどの公案との文脈も相まって、

 

ただの片手の絵が意味を持つようになる。

 

現代美術に通ずるものがあるよね。

梓

 

伊藤若冲:趣味の絵画をとことん探求! 驚きの鶏おじさん

伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)は、

 

京都の裕福な青物問屋の長男。

 

23歳で家業を継いだはずが、

 

40歳のときにこれを投げ出して隠棲する

梓
自由人ですねえ。
それからは絵画三昧の人生を過ごすようになる。

 

江戸の写生画といえば円山応挙(まるやまおうきょ)

 

だというのは前回の記事でも話したけれど、

 

応挙以前から写実的な絵画を描いていたのが若冲だ。

梓

 

伊藤若冲

『雪中雄鶏図』

(細見美術館、京都)

 

若冲と言えば鶏

 

ってイメージがありますね。

 

コケコケまんぼう。

庭へ放し飼いにしていたぐらいだからね。
梓
普段からたっぷり観察していたから、写実的な鶏も描けたんでしょうかねえ。
雪の描写もすてきだね。

 

本来はただ空白であるはずの白色が、

 

若冲にかかれば雪となって実体を持つ

梓
いまにも落ちそうな雪。

 

鶏の尾の先にある竹笹が雪の重みでしなっているのも、

 

雪へ質感を与えていますよねえ。

 

伊藤若冲

『虎図』

(エツコ&ジョー・プライスコレクション、ロサンゼルス)

 

あら、かわいい虎ちゃん。
この『虎図』もユーモラスではあるけれど、

 

その一本一本の体毛の繊細さに注目すると、

 

若冲にどれほどの技量があったのかがわかる。

梓

 

 

虎の皮の細密さがすごい!

 

とぼけた顔に騙されるところでした。

ところで若冲、なんと虎を直接見たことがないらしい。

 

中国画を写して作られたはずなんだけど、この皮の質感を生み出しているというのが、また恐ろしいところ。

梓

 

曽我蕭白:けばけばしさと激しさと

曾我蕭白(そがしょうはく)

 

伊藤若冲より15歳年下の同時代人。

梓
名前からして既にもう、ややこしい感じが。

 

曽我蕭白

『群仙図屏風』

(ぐんせんずびょうぶ)(文化庁)

 

なんだか激しい色使いですねえ。
極彩色だけでもけばけばしいのに、

 

仙人の乗る龍や波の水墨描写が生みだすアクの強さがたまらない。

梓

 

曽我蕭白

『唐獅子図』

(朝田寺、三重)

 

うわあ、これまた激しくて自由なタッチですねえ。

 

右側の唐獅子なんて、腹立つ顔してますよ、はてはて。

 

長沢芦雪:流れるように自由なタッチ

長沢芦雪(ながさわろせつ)は

 

円山応挙門下の人間。

梓
またまた出てきましたよ、円山応挙
その写生画を受け継いでおきながら、

 

奔放なタッチが印象的だ。

梓

 

長沢芦雪

『雲龍図』

(西光寺、松江)

 

長沢芦雪

『雲龍図』

(西光寺、松江)

 

くねくねっと泳ぐような龍がいたかと思えば、

 

さっと雲を引き裂く龍はカッコいいですねえ!

 

長沢芦雪

『虎図襖』

(無量寺・串本応挙芦雪館、和歌山)

 

がんばって睨もうとしているのに、もう完全に猫ちゃんにしか見えないですね。
それでも、飛び出してくるような躍動感!

 

確かな技術に裏打ちされているのがわかるね。

梓

 

まとめ

  • 白隠慧鶴:遊び心溢れる独特の絵。禅僧らしい「公案」の禅画も
  • 伊藤若冲:鶏大好きおじさん。でもその写実の技量は天下一品
  • 曽我蕭白:けばけばしい色使いと激しいタッチ!
  • 長沢芦雪:流れるような水墨画

 

関連記事

 

奇想の画家」のシリーズをまとめてます。みんな、チェックしてくれ~。

 

  1. 「桃山~江戸時代初期」 岩佐又兵衛、狩野山雪
  2. 「 江戸時代」 白隠、若冲、蕭白、芦雪
  3. 「江戸~明治時代」 狩野一信、鈴木其一、国芳、暁斎、芳年

 

 

参考資料

  • 辻惟雄(1970)『奇想の系譜』(美術出版社)
  • 美術検定実行委員会編(2008)『西洋・日本美術史の基本』(美術出版社)
  • 山口晃(2012)『ヘンな日本美術史』(祥伝社)
  • 山下裕二監修(2019)『奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド』(日本経済新聞社、NHK、NHKプロモーション)

 

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