研究者Uさんの聖書講座のシリーズです!
ユダヤ教の聖書解釈を専門にしている「研究者U」です。
今回は、ヘブライ語聖書(いわゆる「旧約聖書」)の「創世記」における、
「ヨセフ」
の物語を中心に見ていきましょう。
目次
ヨセフの物語
ひいきされるヨセフ、兄たちを煽る
オッタヴィオ・ヴァニニ『ヨセフと兄弟』
「ヨセフ」の物語について見ていきます。
まずは、聖書に何が書かれているのか見ていきましょう。
〈創世記37:4》父にひいきされるヨセフに、兄たちは反感を覚える……
- 兄たちは、父がどの兄弟よりもヨセフをかわいがるのを見て、
ヨセフを憎み、穏やかに話すこともできなかった。
〈創世記37:6-37:8》
ヨセフは兄たちからさらなる反感を買うことに……
- ヨセフは言った。
「聞いてください。わたしはこんな夢を見ました。
- 畑でわたしたちが束を結わえていると、
いきなりわたしの束が起き上がり、まっすぐに立ったのです。
すると、兄さんたちの束が周りに集まって来て、わたしの束にひれ伏しました。」
- 兄たちはヨセフに言った。
「なに、お前が我々の王になるというのか。お前が我々を支配するというのか。」
兄たちは夢とその言葉のために、ヨセフをますます憎んだ。
これだとますます反感を買ってしまうマボよ。
妬まれたヨセフ、穴に落とされる
〈創世記37:18-37:19》
羊の放牧で出かけていた兄たちを、ヨセフが探しにいったとき……
- 兄たちは、はるか遠くの方にヨセフの姿を認めると、
まだ近づいて来ないうちに、ヨセフを殺してしまおうとたくらみ、
- 相談した。「おい、向こうから例の夢見るお方がやって来る。
- さあ、今だ。あれを殺して、穴の一つに投げ込もう。
後は、野獣に食われたと言えばよい。
あれの夢がどうなるか、見てやろう。」
〈創世記37:23-37:24》
穴に落とされるヨセフ
- ヨセフがやって来ると、兄たちはヨセフが着ていた着物、裾の長い晴れ着をはぎ取り、
- 彼を捕らえて、穴に投げ込んだ。その穴は空で水はなかった。
このあと、いったい、どうなったマボか~?
ヨセフは、通りがかった商人へ売られ、エジプトへ連れていかれます。
そしてヨセフは、エジプトの宮廷の侍従長・ポティファルの奴隷となります。
この「穴に落ちる」くだりの、気になるポイント
を見ていきましょう。
ヨセフは誰に売られたか?
「彼ら」とは誰か?
アントニオ・デル・カスティージョ・イ・サベドラ『兄たちに売られるヨセフ』
(プラド美術館、マドリード)
「ヨセフが商人に売られてしまうシーン」
に着目します。
- その後、彼らは座って食事をした。
ふと目を上げると、イシュマエル人の隊商がギルアドからやって来るのが見えた。
らくだに樹脂、香油、シスタス香を積んで、エジプトに下って行こうとしていた。
- ユダは兄弟に言った。
「兄弟を殺し、その血を覆い隠したところで、何の得になるというのだ。
- さあ、イシュマエル人に売ってしまおう。彼に手をかけてはならない。
彼は我々の兄弟、我々の肉親ではないか。」
兄弟はこれを聞き入れた。
- その時、ミデヤン人の商人たちが通りかかったので、
彼らはヨセフを穴から引き上げ、
ヨセフを銀二十シェケルでイシュマエル人に売った。
彼らはヨセフをエジプトへ連れて行った。
- ルベン(※)が穴に戻ってみると、穴の中にヨセフはいなかった。
ルベンは自分の衣服を引き裂き、
- 兄弟のところに戻って言った。
「あの子がいない。私は、この私はどうしたらいいのだ。」
※ルベンは兄弟の1人
マンボウちゃんが、このシーンを絵に描いて整理してみるマボよ~。
その時、ミデヤン人の商人たちが通りかかったので、
彼らはヨセフを穴から引き上げ、ヨセフを銀二十シェケルでイシュマエル人に売った。
彼らはヨセフをエジプトへ連れて行った。
1つ目は、「ミデヤン人の商人たち」。
2つ目は、「ヨセフの兄たち」。
では、ヨセフを穴から引き上げイシュマエル人に売った「彼ら」とは誰なのか、
考察していきましょう。
「彼ら」=「ミデヤン人の商人たち」の場合
「彼ら」=「ミデヤン人の商人たち」
の場合を考えてみましょう。
穴に落ちているヨセフを見つけた途端、
近くの商人にヨセフを売ってしまうミデヤン人……
なかなかの鬼畜マボよ……。
つまり、ヨセフをエジプトに運んだのは、ヨセフを買ったイシュマエル人であるはずです。
しかし、その後の36節では、こんな描写が見られます。
あのミデヤン人たちは、
ヨセフをエジプトで、ファラオの役人で親衛隊長であったポティファルに売り渡した。
聖書協会共同訳〈創世記37:36》(2021年11月28日 閲覧)
エジプトで、ミデヤン人が再登場しているマボ。
しかも、穴に落ちた現場ではなく、エジプトでヨセフを引き渡してます。
後のシーンとつじつまが合わなくなるようですね。
「彼ら」=「ヨセフの兄たち」の場合
「ヨセフの兄たち」の場合を考えてみましょう。
ミデヤン人が通りがかった描写、聖書に必要マボか?
兄弟がイシュマエル人にヨセフを売るところに、
たまたま通りかかってぼーっとしているだけの人たちに見えるマボよ。
それに、兄弟でヨセフを引き上げて売っているのに、
兄弟の1人のルベンは何を驚くことがあるマボかね?
致命的な矛盾、とまでは言いませんが、
「彼ら」=「ヨセフの兄たち」説でも、
どこか違和感があるように思えます。
「ミデヤン人」≒「イシュマエル人」と考えたら、どうでしょうか。
つまり、「ミデヤン人とは、イシュマエル人の別名だ」、
あるいは、「イシュマエル人の商人に一団に、ミデヤン人も含まれていた」
という考えです。
ちょっと絵を描きなおしてみるマボよ……。
それに、さっき話題になった36節のシーンも……
あのミデヤン人たちは、
ヨセフをエジプトで、ファラオの役人で親衛隊長であったポティファルに売り渡した。
聖書協会共同訳〈創世記37:36》(2021年11月28日 閲覧)
ミデヤン人≒イシュマエル人だったら、
特におかしくないマボ。
兄たちからヨセフを買ったミデヤン人≒イシュマエル人が、
旅先のエジプトで、ヨセフのことを役人に売るという、
自然な流れになるマボよ。
「兄弟の1人であるルベンが、ヨセフがいないのに驚いている問題」
は解決されないマボねえ。
ここまで、少し細かい話をしましたが、
実は、このような細部の描写について考察することが、
研究テーマにも発展したりするんですよ。
エジプトに連れていかれたヨセフがどうなっていくかを見ていくこととしましょう。
まとめ
- アブラハム(アブラム)⇒イサク⇒ヤコブ(イスラエル)⇒ヨセフと系譜が続いていく
- 父のヨセフへのひいきが兄の嫉妬を呼び、穴に落とされたヨセフはエジプトへ売られていく
- エジプトへ売られるヨセフを「誰が売ったのか」の解釈だけでも深堀ができる
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参考記事
創世記
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