今回から、研究者の方に専門知識を紹介していただくコーナーです!
ここからは、研究者Uさんの聖書講座を始めていきますマボよ~!
マンボウちゃんの知合いの、「研究者U」です。
ユダヤ教の聖書解釈を主に研究しています。
このシリーズでは、
「聖書のストーリーについての意外な一面や、ツッコミどころ」
などを見ていきます。
出エジプト記とは
「創世記」に続く物語
コジモ・ロッセッリ『紅海の通行』
(システィーナ礼拝堂、ヴァチカン)
今回の「出エジプト記」は「創世記」の続きマボか?
以前ご紹介した、ヘブライ語聖書の最初の物語「創世記」に続く2番目の書物が、
この「出エジプト記」です。
ただし、聖書の編纂者は、
「創世記」⇒「出エジプト記」と、順序良く一連のストーリーを書いたわけではない、
と考えられます。
「聖書って、いろんな物語が切り貼りされている」
という解説が、前にあったような……。
と、考えることができるというのは、以前の記事でもお伝えしてきました。
「出エジプト記」は「実際の歴史」としての色が濃くなっていきます。
「Exodus」……ではなかった?
ニコラ・プッサン『紅海横断』
(ビクトリア国立美術館、メルボルン)
英語でいうところの「Exit」ですね。
それで、「出エジプト記」だと。
実は、もともとの書名は「出エジプト記」ではありませんでした。
「最初の方に出てくる単語」
が、そのままタイトルになっていました。
たとえば、「出エジプト記」では最初の方に出てくる単語が「名前」だったので、
「出エジプト記」ではなく、「名前」というタイトルとなっていました。
ということで、「出エジプト記」と名付けられたわけですね。
「名前」とかいう意味深なタイトルをつけておいて、伏線回収ゼロだと、
ズコーってなるところだったマボよ。
ヨセフの死後のイスラエルの民
エドワード・ポインター『エジプトのイスラエルの民の子孫』
(ギルドホール・アート・ギャラリー、ロンドン)
「ヨセフを中心としたイスラエルの民たちが、エジプトに定住する」
ところで物語に幕が下ります。
このような幕切れとなったのは、
「『創世記』を『出エジプト記』へつなげるためとも考えられる」
というのは、以前の記事で触れてきたところです。
当然、物語の冒頭場面でエジプトにいる必要がある、というわけマボねえ。
「……イスラエルの子らの名前は次の……」とありますが、
ヘブライ語の聖書の原文では、この「名前」が最初の方の単語として出てくるので、
「出エジプト記」は「名前」と呼ばれていた、というわけですね。
男児殺害命令
新共同訳〈出エジプト記1:7-1:11》
一般財団法人日本聖書協会HPより
(2022年2月19日 閲覧)
「出エジプト記」の冒頭からいきなり、不穏な雰囲気マボよ~!
ヘブライ人には重労働が課されるようになります。
しかし、それでもイスラエルの民が増え続けたので、ファラオは、
「ヘブライ人に男児が生まれたら殺せ」
という命令を下しました。
そもそも子どもを産むのは女性なわけで、
男の子よりも女の子を手にかける方が、ヘブライ人の数は減らせるのでは。
はて。
「一度戦争が起これば、敵側に付いて我々と戦い、この国を取るかもしれない」
という描写が伏線になっている、とも考えられます。
男が増えると、敵になりうるイスラエルの民の戦力も増えてしまいますからね。
あとは、身も蓋もないことを言えば、
この後の「モーセの誕生」とその後の展開のためには、
「男児殺害命令」が必要なわけです。
まとめ
- モーセがイスラエルの民を連れてエジプトを出ていくのが「出エジプト記」。ただ、タイトルは後になってつけられた。
- 「出エジプト記」の冒頭の描写は、「創世記」ラストのヨセフの物語とつながるように意識されている。
- 「男児殺害命令」は、「モーセの誕生」とその後の原因となっていく。
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参考記事
出エジプト記
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