【静物画】②花/ヴァニタス/ボデゴン│油絵のモチーフと静物画の種類

こんにちは、はてはてマンボウです。

今回は静物画について見てきています。

 


 

【静物画】① バロック時代に確立するまでの変遷とは?

 

前回までの記事はこちらをチェックしてくれ~

 


 

今回は静物画のさまざまなバリエーションを見ていくよ。
梓

 

花環の中の聖家族

ダニエル・セーヘルス ※中央部分はシモン・デ・フォス画

『花環の中の聖家族』

(美術史美術館、ウィーン)

 

前回の記事でも触れたように、プロテスタントのオランダでは、純粋な静物画が描かれ、花や果物が画題として好まれた。

一方、現在のフランスやベルギーにあたるフランドル地方ではカトリックが大勢を占めていて、静物画と宗教画の結びつきが新しいジャンルを生みだした。

それが、花輪の中の聖家族、というわけだ。

梓
聖家族って、イエスとかマリアさまの家族を描いた絵のことマボよね?

お花で飾られてゴージャスまぼ。

そのとおり!
精密に描かれた花輪の美しさは、カトリック・プロテスタント問わず好まれたんだ。

この時代、静物画の価値が認められてきたといっても、最上位にいるのは歴史画。

そこで、歴史画の体裁を取りながらも、花の美しさで自らの技量を誇りながら、かつ市民の需要も満たす「花輪の聖家族」像が生まれた、というわけだ。

梓

 

ヴァニタス

ピーテル・クラース

『ヴァニタス』

(マウリッツハイス美術館、デン・ハーグ)

 

ええと、ちょっと待つマボよ、はてはて……
生のはかなさ、この世のむなしさなど死を思い起こさせる教訓的な画題が「ヴァニタス」

 

オランダの教養ある市民たちは数々のメタファーを楽しんだそうだよ。

梓

 

ステーンウェイク『静物(現世の虚しさの寓意)』

(ロンドン・ナショナルギャラリー)

 

  • 上質の革で装丁された書物

 = 学問や知識(あの世には知恵も知識も持っていけない)

  • 日本刀、巻貝

 = 西洋では収集家好みの貴重品(あの世に持っていけない富のシンボル)

  • クロノメーター(船などで使われる正確なぜんまい時計)

 空しくも流れゆく時の経過を図ろうとするもの

  • 楽器、石の酒壺

 = この世のつかの間の五感の喜び

  • 煙を吐き出すランプ

 = 人間の一生の短さを示す

 

エリカ・ラングミュア、高橋裕子訳(2004)
『静物画』(八坂書房)を参照

それぞれの静物に、いろんな意味が込められているんですねえ。

 

ブロンク・スティルレーフェン(誇示する静物画)

ウィレム・カルフ『食卓の上の角杯とロブスター』

(ロンドン・ナショナルギャラリー、ロンドン)

 

豊かさを象徴するような画題を集めて、黒い背景の前に並べる静物画は、オランダで「ブロンク・スティルレーフェン」と呼ばれた。
梓

 

 

ボデゴン(厨房画)

フアン・サンチェス・コターン『マルメロの実、キャベツ、メロン、胡瓜』

サンディエゴ美術館)

ボデゴンは、台所の野菜や魚などを主題としつつ、暗闇の厳しさで緊張感を持たせているスペイン独特の静物画のこと。
梓


ディエゴ・ベラスケス「マルタとマリアの家のキリスト」
(ロンドン・ナショナル・ギャラリー)

 

スペインを代表するバロック時代の巨匠ベラスケスも、ボデゴンにあたる絵画を描いている。
梓
聖書のワンシーンみたいマボけど、これ、キリストっぽい人は後ろの方で、地味に描かれているマボねえ。地味地味マンボウまぼよ。

ということはこれも……。

そう、これも歴史画の体裁を取りながら、実際に描きたいのは手前の一般の人々、そしてボデゴン、というわけだね。
梓
見る者が誰しも認めるのは、これが聖書の記述との関連によって「高尚にされた」ボデゴンであるということだ。
この絵の核心は台所のテーブルの上にある。
並んでいるものはといえば、
真鍮のすり鉢とすりこぎ、
粗末な陶器の皿の上できらきら光っているタイの一種、
途中まで上薬を掛けたオリーヴ油の壺、
タマゴとピューターのスプーンを載せた皿、
唐辛子、
ニンニク二個(一個はすでに小片に分けられている)など。
(中略)
ベラスケスが描いた魚は、ある特定の種類の魚に似ているだけではなく、死んでいてもなお、海の中を泳いでいる生きた魚のしなやかな動きを想起させる。
ベラスケスの卵には重さが感じられ、厚くて白くてざらついた殻は、田舎で放し飼いになっている雌鶏の産みたての卵を思わせる。
すりこぎが回ってすり鉢に当たる音が聞こえてきそうだし、
唐辛子の乾いてしわの寄った手触りを感じ取ることもできそうだ。
ベラスケスは内的な構造や変化についての深い理解、物の本質についての想像力に支えられた共感を、私たちに伝えているのである。
エリカ・ラングミュア、高橋裕子訳(2004)
『静物画』(八坂書房)
さきほどのヴァニタスとは打って変わって、ここにベラスケスが描いている静物は、どんな象徴的な意味も持っていない。

ただ、そこにあるだけだ。

だけど、普段私たちは、そこに静物があることにも気づかないまま生きている。

それを、ベラスケスが我々に目の前に提示してきている。この静物を前に、我々は立ち止まり、果たして何を考えるのだろうか。

梓

まとめ

  • 歴史画の体裁を取りながらも、花の美しさで自らの技量を誇りながら、かつ市民の需要も満たす「花輪の聖家族」像が生まれた。
  • 豊かさを誇示する「ブロンク・スティルレーフェン」がある一方、生の虚しさを説くヴァニタス画もオランダでは好まれた。
  • スペインでは、台所の野菜や魚などを主題としつつ、暗闇の厳しさで緊張感を持たせている独特の静物画、ボデゴンが誕生した。
 

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参考資料

  • エリカ・ラングミュア、高橋裕子訳(2004)『静物画』(八坂書房)
  • 早坂優子(2006)『鑑賞のための西洋美術史入門』(視覚デザイン研究所)

 

参考記事

 

 

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