今回のテーマは……
『日本人のための日本語文法入門』
を通して、日本語の使い方について見ていくよ。
目次
日本人のための日本語文法入門
原沢伊都夫(2012)『日本人のための日本語文法入門』(講談社現代新書)
マンボウちゃん、このとおり、日本語なんていくらでも上手に使いこなしているマボよ~
あ、それはってはてよ~
マンボウちゃんのような日本語をわかっているつもりの人たちのために書かれた日本語の入門書なんだ。
本書は、日本語の文法について誰にでもやさしくわかるように書き下ろした入門書です。
タイトルである『日本人のための日本語文法入門』は、国語文法しか知らない一般の日本人に対して、日本語の本当の姿を知ってもらいたいという願いを込めてつけたものです。
(中略)
本書は一般の日本人にとっては教養としての日本語の入門書になりますが、
日本語教師をめざす人にとっては、日本語のしくみを知るための最初の文法書として活用することができます。
シンプルで単純な構造の日本語文
- 動詞文
- 形容詞文
- 名詞文
の3つだ。次のような例文を見てみよう。
1)母が台所で料理を作る。
(「作る」は動詞だから、動詞文)
2)新緑がとても美しい。
(「美しい」はイ形容詞だから、形容詞文)
3)駅前がやけに賑やかだ。
(「賑やかだ」はナ形容詞だから、形容詞文)
4)あの人が責任者だ。
(「責任者」は名詞だから、名詞文)
①動詞 ②形容詞 ③名詞
があるというわけマボね。
ところで、「イ形容詞」「ナ形容詞」って、何マボか?
「美しい人」のように、「美しい」は「イ」で終わるイ形容詞。
「賑やかな人」のように、「賑やかな」は「ナ」で終わるナ形容詞。
というわけだね。
主語は重要ではない
文法と言えば、主語と述語なんじゃ。
述語をこんなに丁寧に紹介しておいて、主語はどうでもいマボか?
主語はその他の要素と同格だということなんだ。
(「母が/台所で/料理を/作る」という例文を示して……)
日本語文法では学校文法のように主語を特別扱いしません。
いくつかある成分のなかの一つであるという考えです。
つまり、「母が」も「台所で」も「料理を」も皆対等な関係で述語と結ばれていると考えるのです。
学校文法のように、主語である「母が」が述語と強く太く結ばれているとは考えないんです。
格助詞と「は」
母「が」
台所「で」
料理「を」
といった名詞を文につなげるための、いわば「ボルト」のことを「格助詞」という。
一方で、いろいろな名詞が、この格助詞とやらで文の中に埋め込まれていく、というわけマボね!
- ~が
- ~を
- ~に
- ~で
- ~と
- ~へ
- ~から
- ~より
- ~まで
「~は」っていうのは無いマボか?[/word_balloon]
客観的な事実を表す「コト」と、主観的な気持ちを表す「ムード」
日本語には、客観的な事実を表す「コト」と、主観的な気持ちを表す「ムード」の2つがある。
(「父親が台所でカレーライスを作った/なんて信じられない」という例文を示して……)
- 格助詞だけで成り立つ文は、客観的な事実のみを示す
⇒「父親が台所でカレーライスを作った」という格助詞だけで成り立つ文は客観的な事実のみ。
- 話者の主観的な気持ちや態度を表すためには、「ムード」の要素が必要
⇒「父親が台所でカレーライスを作った」という事柄に対して、「~なんて信じられない」という話者の気持ちを表している。
「は」と「が」はどこが違う?
この本では、「~は」で表される名詞は、話し手の主観的な気持ちの込められたムードを表すとしているよ。
(「父親は台所でカレーライスを作った」という例文を示して……)
どこに話者の気持ちが表されているんだろうと思うかもしれませんね。
たしかに「~は」は使われていますが、話者の気持ちがどのように表現されているのか、わかりにくいですね。
じつは、「父親は」は文の主題として提示されているんです。
主題というのは、その文のなかで話者が特に話題の中心として聞き手に伝えたいものです。
例文は、「父親について言えば、台所でカレーライスを作った」という意味合いです。
この文では「父親が 台所で カレーライスを 作った」というコトの成分のなかから、
「父親が」という成分が文の主題として選ばれ、
「~は」で提示されていると考えることができるんですね。
何気なく使っている「は」と「が」にも、こんな意味の違いがあったマボねえ。
- 台所では父親がカレーライスを作った。
(「台所」について言えば)←「台所」が主題
- カレーライスは父親が台所で作った。
(「カレーライス」について言えば)←「カレーライス」が主題
主題と解説
●主語は重要ではない
●「主題」と「~は」
について見てきたね。
最後に、「日本語は『主題』と『解説』の関係で成り立っている」という話を見てみよう。
(「父親は台所でカレーライスを作った」という例文を示して……)
日本語文は基本的にコトの成分のなかから1つが主題として提示され、
残された部分は主題を説明する部分(文法用語では解説と呼んでいます)
となるわけです。
「父親は(主題)/台所でカレーライスを作った(解説)」
文の主題は「父親は」で、
その解説が「台所でカレーライスを作った」
ということになるわけです。
日本語文の多くはこのような「主題-解説」という構造であり、
学校文法で教えられる「主語-述語」の関係ではありません。
主述関係はあくまでコトのなかでの関係の一つであり、日本語文を正しく説明できないというのは、こういう理由からなんですね。
まとめ
- 日本語の述語は「①動詞文」「②形容詞文(イ形容詞・ナ形容詞)」「③名詞文」の3種類。
- 「主語」は、格助詞で表される要素の1つに過ぎない。
- 文には、客観的な事実を表す「コト」と、主観的な気持ちを表す「ムード」の要素がある。
- 「~は」を使えば、主観的な「ムード」で主題を表すことができる。
- 文は「主題」と「解説」の関係で成り立っているからこそ、主語は重要ではない。
「日本語」シリーズ
- 「異字同訓」/漢字の使い分け例│『新しい国語表記ハンドブック』より
- 【日本語/アクセント】そこにどんなルールがあるのか╿起伏式/平板式 そのせめぎ合い
- 「~は」と「~が」の違いを説明できますか?
- 「受け身文/自動詞/他動詞」が表す日本人の世界観
- 【日本語/飯間浩明】① 言葉の使い方を考える/辞書を編む などから
- 【日本語/飯間浩明】② 文章の書き方を考える/伝わる文章の書き方教室 などから
参考資料
- 原沢伊都夫(2012)『日本人のための日本語文法入門』(講談社現代新書)
コメントを残す