【日本語】②「受け身文/自動詞/他動詞」が表す日本人の世界観

こんにちは、はてはてマンボウです。

 

『日本人のための日本語文法入門』を通して、
日本語の奥深い話を見ております。

 


 

【日本語】① 「~は」と「~が」の違いを説明できますか?

 

前回までの記事はこちらをチェックしてくれ~


 

今回も引き続き、よくよく聞いてみると奥が深い……そんな日本語のあれこれを見ていくよ。
梓

 

自然中心と人間中心の発想

『日本人のための日本語文法入門』では、

自動詞と他動詞の違いを次のように指摘している。

梓

自動詞は「雨が降る」や「太陽が輝く」など、自然現象を表すときによく使われ、物事が自然に生じることを表します。

 

一方、他動詞は、「子供が絵を描く」や「父親が庭を掃除する」など、人間の行動が起点となり、物事を引き起こすことを表します。

 

一言で言えば、自動詞は自然中心であり、他動詞は人間中心の見方に立つと言えるわけですね。

 

このような観点から、日本語を見つめてみると、人間に関わることでも自動詞によってあらわされることが多いのに気づきます。

 

(※例を抜粋)

  • (私は)驚いた ⇔ I am/was surprised.
  • 犯人が捕まった ⇔ A criminal was caught.
  • 富士山が見える ⇔ I see Mt.Fuji
  • 君の気持ちがわかる ⇔ I understand your feeling
  • 私には家族がいる ⇔ I have a family

 

たしかに、日本語で自動詞になっている文章も、英語だと他動詞になっているマボ。
本書ではこれについて、

日本語が自然中心の世界観であるのに対し、

英語が人間中心の世界観であるからだ!

と説明しているんだ。

梓

 

自動詞と他動詞のペア

さて、この自動詞と他動詞。

日本語だと4つのグループに分けることができる。

梓

 

  1. 自動詞と他動詞のペア
  2. 自動詞だけ(無対自動詞)
  3. 他動詞だけ(無対他動詞)
  4. 自他動詞

 

自動詞と他動詞はわかりますが……

自動詞と他動詞のペア……

自他動詞……

はて?

比較すると、こんな感じ。
梓

 

①自動詞と他動詞のペア

同じ語源からできた自動詞と他動詞

=同じ漢字を使って、自動詞と他動詞が表現できる。

 

(例)

「電気が消える - 電気を消す」
「お湯が沸く - お湯を沸かす」

 

※日本語には、この「①自動詞と他動詞のペア」が多い

 

自他動詞

同じ言葉を自動詞で他動詞でも使える表現

 

(例)「解散する」は……

  • 自動詞の場合:「衆議院が解散する
  • 他動詞の場合:「首相が衆議院を解散する」

 

※英語には、この「④自他動詞」が多い

 

おお、そんな違いが。

言われるまで気づきませんでしたマボ。

 

ちなみに、

「日本語には①自動詞と他動詞のペアが多い」

「英語には④自他動詞のペアが多い」

って、どういうことマボか?

たとえば、英語だと、

“open”は、

「開く(自動詞)」

「開ける(他動詞)」

ともなる自他動詞だね

 

このように、英語には自他動詞が沢山ある、というわけだ。

梓

 

自動詞と他動詞のペアを分ける日本、自他動詞を多用する外来語

さて、ここでもう一度、

「自動詞」「他動詞」の4つのグループについて、

例文も交えながら、

『日本人のための日本語文法入門』の解説を見てみよう。

梓

 

  • 自動詞と他動詞のペア

(自)木が倒れる ⇔ (他)作業員が木を倒す

日本語の動詞は、自動詞と他動詞のペアが基本でしたね。

そこでは、自動詞が「変化」を表し、他動詞が「動作」を表しました。

 

  • 自動詞だけ(無対自動詞)

(自)木が茂る、星が光る、柿が熟す

〔自動詞のみの〕最初の3例である「木が茂る」「星が光る」「柿が熟す」に共通する特徴は何でしょうか。

そう、これらの現象は、すべて自然現象ですね

このような自然の変化はひとりでに生じるものですから、

その変化を引き起こすような動作を必要としないわけですね。

 

だから、動作を表す他動詞がないんです。

 

  • 他動詞だけ(無対他動詞)

(他)先生が生徒を褒める

無対自動詞とは反対に、今度は動作を表す動詞だけが存在するということになります。

ということは変化を表す自動詞を持たないということですね。

 

(中略)

 

「弟をなぐる」「生徒をほめる」「小説を読む」「犯人を捜す」「妻を愛する」の動作において、

その目的語(対象)に目に見えるような変化が起きるでしょうか

起きそうもないですよね。

このために、変化を表す自動詞が存在しないんです。

 

ペアのある他動詞を見ると、

必ず結果が生じるような動作

「倒す」「冷やす」「暖める」「壊す」「閉める」「散らかす」

となっているのがおわかりになるでしょう。

 

 

  • 自他動詞

(自)工事が再開する ⇔ (他)会社が工事を再開する

自他動詞は4つの分類のなかで数は一番少ないのですが、

「2字漢字+する」という形式が多いのが特徴です。

 

じつは、この2字漢字はすべて中国から来た漢字なのですね。

中国語では自他の区別がなく、動詞は自動詞としても他動詞としても理解されます。

したがって、中国語からの漢字に「する」をつけると自他動詞になりやすい面があるようです。

 

(中略)

 

英語をカタカナにした「オープンする」や「クローズする」も

「店がオープンする - 店をオープンする」

「店がクローズする - 店をクローズする」

などと自他動詞として使うことができますね。

これも、これらの英語が自他動詞であることと関係しているわけです。

 

こんなこと普段は考えも見ませんでしたが、なるほど、違いがあるんですねえ。

 

まとめ

  • 自動詞の多い日本語が自然中心の世界観であるのに対し、他動詞の多い英語は人間中心の世界観
  • 日本語に自他動詞のペアは少ないが、中国語由来の動詞やカタカナ語の動詞は自他動詞になりやすい

 

参考資料

  • 原沢伊都夫(2012)『日本人のための日本語文法入門』(講談社現代新書)