「異字同訓」/漢字の使い分け例│『新しい国語表記ハンドブック』より

こんにちは、はてはてマンボウです。

今回のテーマは……。

 

三省堂編集所(2021).新しい国語表記ハンドブック第九版 三省堂 

 

『新しい国語表記ハンドブック』……はて。

この回遊記でときどき出てくる、

「細かい国語の話」

のパターンでしょうか。

そのとおり。

今回は、三省堂の『新しい国語表記ハンドブック』から、

個人的に気になった「異字同訓」の使い分けを見ていくよ。

梓

『新しい国語表記ハンドブック』

さて、わかったようなわからないようなタイトルの本ですが、

中には何が書いてあるんですか?

この本は、日本語を書くにあたり参考になるような、
内閣や文科省が出している告示などをまとめた本なんだ。
梓

前書き

 

子どもから大人まで、日常的に文書や文章を読み書きする人にも、

また、日本語を学習している人にも、

だれにとっても読みやすく通じやすい日本語の表記を示すものとして、

「常用漢字表」や「送り仮名の付け方」の制定など、

多くの国語施策が行われています。

 

この本は、それらをいつでも手軽に調べて確認できるように編集したものです。

〔コンテンツの抜粋〕

  • 常用漢字表
  • 常用漢字の筆順
  • 書き間違いやすい漢字
  • 敬語の指針

……

 

そういえば、「三省堂」って、なんだか聞き覚えがあるような……。
『辞書を編む』
でも有名になった飯間浩明さんが編纂しているのも、
『三省堂国語辞典』だよ。

何かと、言葉への思い入れを感じさせる出版社だね。

梓

 


 

【日本語/飯間浩明】① 言葉の使い方を考える/辞書を編む などから

 

飯間浩明さんの話が気になる人は、こちらも記事もチェックしてくれ~はて~

 

さて、ここからは「異字同訓」、

つまり「違う字だけど同じ読み方」の漢字の使い分けの例を見ていくよ。

梓

 

生まれる・生む/産まれる・産む

生まれると産まれる……はて。

「生まれる」はいろんな場面で使いますが、

「産まれる」は出産のイメージです。

 

【生まれる・生む】誕生する。新しく作り出す。

京都に生まれる。子供が生まれる*。下町の生まれ。新記録を生む。傑作を生む。

 

【産まれる・産む】母の体外に出る。

予定日が来てもなかなか産まれない。卵を産み付ける。来月が産み月になる。

 

* 「子どもが生まれる」については、

 「母の体外に出る(出産)という視点から捉えて、「産」を当てることもあるが、

現在の表記実態としては、

「誕生する」という視点から捉えて、「生」を当てるのが一般的である。

 

ほーん、こんな使い分けなんですねえ……。

しかし、この*の説明は……

何か気になることが?
梓
いえ、なんだか、編集者のさじ加減のような気も……。

 

「子供が生まれる」は「生」なのに、

「予定日が来てもなかなか産まれない」は「産」なのって、そんなに違いますか?

「予定日が来てもなかなか子供がーー」だったら「ーーまれない」となるんですかねえ?

まあ、原則はありつつも慣習的な例外もあったりするので、そういう微妙な使い分けの難しさもあるんだろうね。

おおらかな気持ちで見ていこう。

梓

踊る/躍る

踊る、躍る、踊る、躍る、踊る、躍る……

ああ~目が踊るマボ~~

【踊る】リズムに合わせて体を動かす。操られる。

音楽に乗って踊る。盆踊り。踊り場。踊らされて動く。甘言に踊らされる。

 

【躍る】跳び上がる。心が弾む。

吉報に躍り上がって喜ぶ。小躍りする。胸が躍る思い。心躍る出来事。

 

「踊る」はダンシング、

「躍る」はぴょーんとジャンプ、

という違いマボね!

音楽に合わせて体を動かしているのが、
まるで何かに操られているようにも見えているから、
「踊らされる」という表現が生まれたのかもしれないね。
梓

 

堅い/固い/硬い

こ、これは違いが難しいマボよ……!

【堅い】中身が詰まっていて強い。確かである。

堅い材木。堅い守り。手堅い商売。合格は堅い。口が堅い。堅苦しい。

 

【固い】結び付きが強い。揺るがない。

団結が固い。固い友情。固い決意。固く信じる。頭が固い。

 

【硬い】(⇔軟らかい)。外力に強い。こわばっている。

硬い石。硬い殻を割る。硬い表現。表情が硬い。選手が緊張で硬くなっている。

 

「硬い」は、あんまりいい意味で使われてないんですかねえ。

あとは、「石」にしても「殻」にしても、

叩くと「コツコツ」と響くような印象です。

割れるなら、「パキッ」と音がするんでしょうか。

一方、「堅い」は、中までぎっしり詰まっているイメージですかねえ。

「石」と違って「堅い木」の場合、表面から「コツコツ」と音はしませんが、

中身が詰まっているから、割れるとしても「ミシミシ」と音が鳴るような……。

ということは、「口が堅い」人は、口の中にもみっしりと、こう、何かが詰まっているんでしょうねえ……。

「固い」は、結びつきの強さや、揺るぎのなさが、「硬い」と違って、いい意味で使われることが多そうだね。

そのまじめな感じが行き過ぎると、「頭が固い」となるんだろうけど。

梓

 

静まる・静める/鎮まる・鎮める

【静まる・静める】動きがなくなり落ち着く。

心が静まる。嵐が静まる。騒がしい場内を静める。気を静める。

 

【鎮まる・鎮める】押さえ付けて落ち着かせる。鎮座する。

内乱が鎮まる。反乱を鎮める。痛みを鎮める。せきを鎮める薬。神々が鎮まる。

 

これもなんだか、わかったような、わからないような……。

自分の気持ちは「静める」
でも、自分の中の病気やけがは「鎮める」
うーん、病気やけがは、薬なんかを使って無理やり押さえ付けているイメージでしょうか。

場内は「静まる・静める」
でも、内乱や反乱は「鎮まる・鎮める」
騒がしい場内よりも内乱の方が、無理やり押さえ込むイメージが強いということですかねえ。

魚をとる/ねずみをとる/鯨をとる

さて、最後は趣向を変えて、質問形式にしよう。

さて、魚・ねずみ・鯨はそれぞれ、どんな漢字を当てるだろうか?

梓
うーん……降参マボ。

全部「取る」でいいんじゃないでしょうか、はて……。

  • 魚を取(捕)る*。
  • ねずみを捕る。
  • 鯨を捕る。

*「魚をとる」の「とる」は「手に入れる」という意で「取」を当てるが、

「つかまえる」という視点から捉えて、「撮」を当てることもできる。

 

なるほど……

あっ、では、どうしてねずみや鯨には「取る」が使えないのでしょうか、はて。

まあ、これは私の推測だけど、
「取る」=「手に入れる」
というのがポイントなんじゃないだろうか。

「手に入れる」っていうのは、「利用する」というイメージがあるけれど、

ねずみを捕まえるのは駆除するためが多いから、「利用する」のとは違う。

また「手に入れる」というのは、文字通り、手で持てる範囲を指すのではないかな。

そうなると、鯨はさすがに「手に余る」ということで、「取る」が使いづらいんじゃないかな。

梓

 

おお、なんだかそんな感じがしてきたマボ……。

さじ加減とか言って、スマンボウ。

「どうしてそんな使い方をしているのかな?」というのを考えたり調べたりするのも楽しそうマボね!

まとめ

  • いろいろな国語表現についてまとめたのが三省堂の『新しい国語表記ハンドブック』
  • 「違う感じで同じ音」の「異字同訓」は、よく見ると、ちょっとした違いが隠れています。

 

参考資料