【風景/西洋画】① 歴史画の「背景」から遠近法の主役へ

こんにちは、はてはてマンボウです。

クロード・モネ『アルジャントゥイユのひなげし

(オルセー美術館、パリ)

 

クロード・ロラン『シバの女王の乗船

(ナショナルギャラリー、ロンドン)

 

風景画って優雅で癒されますよねえ、はてはて♪
ところが、そんな風景画が西洋絵画で好んで描かれるようになるまでには、紆余曲折があったんだ。
梓
まぼーん。みんな大好き風景画だと思っていました……。
そういうわけで、今回は西洋絵画における「風景」の変遷を見ていくよ。
梓

 

ルネサンス以前:「物語の背景」としての風景

ジョット『死せるキリストへの哀悼

(スクロヴェーニ礼拝堂、パドヴァ)

 

西洋絵画は

 

「文字が読めない人のための聖書」、

 

すなわちキリスト教におけるさまざまなシーンを表すものとして描かれることが多かった。

 

そして風景は、「それがどんなシーンなのか」を表す物語の背景という役割を負っているに過ぎなかった。

 

ここではどんな風景が描かれているかな。

梓
背景に注目してみると……

 

ここは、丘の上ですかねえ。

 

あとは、天使がたくさん飛んでいるまぼねえ。

これは、ゴルゴダの丘で磔刑に処されたキリストが十字架から降ろされたシーン。

なので、場面は丘になっているし、キリストの死を天使たちも悼んでいる、という風景になっているんだね。

 

だけど、それ以上のものではない。

梓

 

ルネサンス:「遠近図法」で技法を示すように

レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐

(サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ修道院、ミラノ

 

ダ・ヴィンチの代表作としてあまりにも有名な『最後の晩餐』。

 

ここでは遠近図法が使われていると言われている。

梓
遠近図法、はて。
画面左右にドアのようなものがいくつも描かれているよね。

 

この直線を辿っていくと……

梓

 

 

部屋に奥行きがあるように感じられるよね。

 

そしてさらには、画面中央のイエスに注目がいくようになっている。

梓
はて!

 

それまで、絵を見る人が絵から読みとるのはシーンの状況的説明だけでした。

 

ところがレオナルドは、絵を見る人が絵の中の世界と同次元にいるような臨場感や感情を持つようにしたのです。

 

絵の主役に自然と目が向くように、

背景その他の要素の描きかたを工夫して、画面全体を統一感のある構図で考えたのです。

 

早坂 優子(2006)

『鑑賞のための西洋美術史入門』

(視覚デザイン研究所)

 

こうして、絵画の背景は、画家がその技量を発揮するための一材料となっていくんだ。

またこの絵画では、遠近図法以外にも、ルネサンス以前との違いが見られる。

梓

 

 

視線を集めるイエスの頭の向こうには、開けた窓と山々がある。

おかげで我々は、この絵画にさらなる奥行きを感じられるようになった

梓
たしかに、遠くの山までよく見えてますねえ。

しかし、それが何か?

「最後の晩餐」という聖書の一シーンを描くのに、わざわざ窓だとか山だとかを描く必要はないよね。

だけど、画家が自分の技法を示すために聖書からやや逸脱をする表現をしている。

 

つまり「風景」が少しずつ存在感を持つようになってきた、というわけだ。

梓

 

 

まとめ

  • 西洋絵画は「文字が読めない人のための聖書」、すなわちキリスト教におけるさまざまなシーンを表すものとして描かれることが多かった。
  • 西洋絵画の風景は、「それがどんなシーンなのか」を表す物語の背景という役割を負っているに過ぎなかった。
  • その風景もやがて、画家が技法を示すために存在感を増していく。

 

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参考文献

  • 早坂優子(2006)『鑑賞のための西洋美術史入門』(視覚デザイン研究所)
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