今回は、
「西洋絵画の翼を持つ人たち」
シリーズ第4弾、最終章です。
天使は「神の使い」でしたね。
はてはて、いろいろ教えてくださーい。
目次
キリスト教の三大天使
ミカエル
ルカ・ジョルダーノ
『大天使ミカエルと叛逆天使たち』
(美術史美術館、ウィーン)
『聖ミカエルと竜』
(国立西洋美術館、東京)
龍や堕天使と争う様子がよく描かれる。
ガブリエル
レオナルド・ダ・ヴィンチとアンドレア・デル・ヴェロッキオ
『受胎告知』
(ウフィツィ美術館、フィレンツェ)
フラ・アンジェリコ
『受胎告知』
(サン・マルコ美術館、フィレンツェ)
エル・グレコ
『受胎告知』
(大原美術館、倉敷)
『受胎告知』の絵でしばしば描かれる。
聖母マリアのもとに現れて、
イエス・キリストの誕生を告げる。
早春の一日、マリアの異質に御使いが舞い降りた。ガブリエルである。
(中略)
天使の最初の言葉は
「おめでとう、恵まれた方よ、主があなたと共におられます」
この祝詞Ave Maria(アヴェ・マリア)はローマ教会の典礼文の中で不滅のものとなっている。
利倉隆(1999)
『天使の美術と物語―カラー版』
(美術出版社)
ラファエル
ゴヤ
『トビアスと大天使ラファエル』
(プラド美術館、マドリード)
聖書のストーリーの中で、トビアスという青年の旅に随行する守護天使として登場する。
えっ!? これも、天使なの
熾天使(してんし)-セラフィム
ライヒェナウ派
『イザヤの幻視』
(バンベルク州立図書館、バンベルク)
9つある天使の位階(いかい)の中でも
最高位にある天使。
「6つの翼をもち、
2つをもって顔を覆い、
2つをもって足を多い、
2つをもって飛び交っていた」
とされている。
ジョット
『聖痕を受ける聖フランシスコ』
(聖フランシスコ教会、ピサ)
見間違いでなければ、
セラフィムからビームのようなものが
……はて?
両手両足を貫いて十字架に釘を刺された。
そのときと同じ傷がフランチェスコにも聖痕として表れた
という伝説があるんだ。
セラフィムのビームをよく見ると、
フランチェスコの両手両足に伸びている。
智天使(ちてんし)-ケルビム
……今度のケルビムはどんな姿をしているんですか。
に出てくる預言者エキゼエルによると、
こんな感じらしい。
……天空に4つの生き物、すなわち智天使ケルビムを見た。
それは各々が4つの顔と
4つの翼を持っており、
4つの顔とは獅子と牛と鷲と人間であった。
利倉隆(1999)
『天使の美術と物語―カラー版』
(美術出版社)
なんかもう、好き放題言ったもん勝ちというか、はて。
ルネサンス期の巨匠・ラファエロ
にかかれば、なんとか絵画として成立する。
ラファエロ
『エキゼエルの幻視』
(パラティーナ美術館、フィレンツェ)
しかし、これを天使と呼べるのでしょうか、はて。
顔だけのヘンな奴はだいたいセラフィムかケルビム
ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ
『聖痕を受ける聖フランシスコ』
(プラド美術館、マドリード)
なんですか
この顔だけの浮遊物は!
偶然紛れ込んでしまったのでしょうか。
聖フランチェスコの聖痕のビームを辿ってみると……。
ということは、
この顔から翼が生えている生きもの、
まさか、セラフィムなんじゃ……?
だけど、これはこの画家がたまたま趣味の悪い絵を描いたというわけじゃない。
もっといろんな絵にも紛れ込んでいる。
『聖フランシスコ・ザビエル』
(神戸市立博物館、神戸)
右上へ目を動かすと……。
顔だけ天使!
見慣れた絵なのに、気づきませんでした……。
ちょっと注意して絵画を見ると発見できるかもね。
近現代の天使
最後は近現代の天使絵画から1枚。
シンベリ
『傷ついた天使』
(アテネウム美術館、ヘルシンキ)
彼の描く天使は、
幼児のような姿でも、神
の使いとしての勇ましい姿でもなく、
折れた翼を持ち傷ついた身体を運ばれるいたいけな少女だ。
まとめ
- 三大天使は、勇ましいミカエル、メッセンジャーのガブリエル、旅人に寄り添うラファエル
- 最上位の天使、セラフィムとケルビムは、時に顔だけの不思議な姿に
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参考文献
- 利倉隆(1999)『天使の美術と物語―カラー版』(美術出版社)
- 平松洋(2015)『「天使」の名画』(青幻舎)