今回は、東ローマ帝国、すなわちビザンツ帝国の歴史について見ています。
ビザンツ④│ヘラクレイオス1世│ササン朝・ホスロー2世 との戦い/公用語「ギリシャ語」へ
前回までの記事はこちらをチェックしてくれ~
そして、次代の王朝「イサウリア朝」のレオン3世について見ていこう。
目次
首都包囲戦と「ギリシア火」
秘密兵器「ギリシア火」
『コンスタンティノス4世のモザイク画』
(サンタポリナーレ・イン・クラッセ聖堂、ラヴェンナ)
その後、イスラームでウマイヤ朝が誕生すると、
ササン朝のホスロー1世の626年の首都攻撃からおよそ半世紀ぶりに、
初代カリフのムアーウィヤのコンスタンティノープル侵攻を受け、
コンスタンティノス4世は窮地に陥ることになる。
よく生き延びたわねえ。
そこには、「ギリシア火」も貢献している。
この時に海戦で投入されたのが、一種の火炎放射器で「ギリシア火」と呼ばれる秘密兵器である。
「ギリシア火」を搭載した艦船による風上からの攻撃は、敵の木造船に対しては圧倒的な威力を発揮したらしい。
(中略)
結果、コンスタンティノープル市は鉄壁の陸上壁とともに海上からも敵の艦船を寄せつけることなく、最終的に勝利を勝ち取った。
中谷功治(2020).
ビザンツ帝国-千年の興亡と皇帝たち 中公新書.
『マドリード・スキュリツェス』:『歴史概観(スキュリツェス年代記)』の写本
(スペイン国立図書館、マドリード)
こりゃ、ほんとにまんま、火炎放射器マボよ~!
ヘラクレイオス朝の皇帝は守るだけでなく、結構外征もがんばっていて、この王朝のときに、「ビザンツ世界」と言われる領域がだいたい確定する。
- 東方:コーカサス地域(アルメニア~ジョージア)
- ギリシア本土を含むバルカン半島の全体
- 地中海世界:エジプトから西のカルタゴ地域、シチリア島を含むイタリア
- 海洋世界:ジブラルタル海峡に近いセウタ、エーゲ海、黒海など
- 小アジア(アナトリア)
※「中谷功治(2020).ビザンツ帝国-千年の興亡と皇帝たち 中公新書.」を参考に作成
“Game of Thrones”の”Wildfire”
マンボウちゃんは『ゲーム・オブ・スローンズ』って見た?
さて、この『ゲーム・オブ・スローンズ』に「ワイルドファイア」と呼ばれる武器が出てくる。
『ゲーム・オブ・スローンズ』はファンタジーなんだけど、リアルな攻城戦もしばしば描かれていて、この「ワイルドファイア」は王国の有力な武器として登場する。
Wildfire is similar to real-life napalm or Greek fire, both highly combustible liquids used in combat. Greek fire was famously believed to be used by the Byzantine Empire throughout its history (roughly the 4th to the 15th Centuries CE), and so may have been a technology known to medieval peoples.
ワイルドファイアは、現実のナパームやギリシア火に類似しており、どちらも戦闘に使われる高可燃性の液体である。
ギリシア火は、ビザンツ帝国がその歴史を通じて(およそ4世紀から15世紀)使用していたとされることで有名であり、中世の人々にも知られていたであろう技術である。(拙訳)
Game of Thrones Wiki「Wildfire」(2022年11月28日確認)
「あ、これギリシア火じゃん!」
となった。
実際、ドイツ語の吹替版だと、ワイルドファイアは、ドイツ語で「ギリシア火」を意味する「Seefeuer(海の火)」と改名されたらしい。
そういう歴史の要素を物語に取り入れることで、特に欧米の人たちがドラマを見るときは、物語をよりリアルなものに感じられるのかもしれないですねえ。
聖像破壊運動(イコノクラスム)
イサウリア朝・レオン3世と聖像禁止令
レオン3世(左)と息子コンスタンティノス5世(右):イサウリア朝(717~802)
※レオン3世とコンスタンティノス5世のソリドゥス金貨
Wikipedia「レオーン3世」(2022年10月15日確認)
ここに挙げたのは、「聖像禁止令」とセットで必ず語られるレオン3世だ。
「神聖なる画像」のことで、イエスや聖母マリアをはじめとした聖書上の人物たちや彼らにまつわる物語を描いている。
ビザンツ世界での中世美術として、しばしば取り上げられるのが、イコン。
アンドレイ・ルブリョフ『至聖三者』
(トレチャコフ美術館、モスクワ)
「崇拝」と「崇敬」
何が違うマボか。
- 崇敬
その物体を直接崇めるのではなく、そこに描かれている人物を敬うこと
⇒イコンは、いわば霊的な世界への「窓口」であって、絵画そのものを崇めるのではない
- 崇拝
その物体を直接崇めること
⇒モーセの十戒でも偶像崇拝が禁止されているとおり、本来は、物体そのものを崇めることはNG
なんかヘリクツっぽいですし、違いがよくわからないですマボ。
実際、民衆レベルで崇敬と崇拝の区別が意識されていたかどうかは、いたって怪しい。
(中略)
とはいえ、聖書が読める人など相当にまれな時代にあって、イコンのような図像メディアは信仰の中身を説明するためにとても重宝された。
なかなか悩ましい問題であったと言えるだろう。
中谷功治(2020).
ビザンツ帝国-千年の興亡と皇帝たち 中公新書.
偶像崇拝を厳しく取り締まるイスラームに隣接していた影響だとか、
エーゲ海で火山噴火があったのはイコン崇拝への神の怒りだと思ったからとか、
まあ、いろいろと推測はあるけど、定説はないらしい。
大切に崇めていたイコンを破壊されることとなり、民衆は怒って反乱する。
ローマ教皇も、レオン3世をこれを批判して、東西の教会の対立は決定的に。
レオン3世とその息子・コンスタンティノス5世は聖像破壊を続けたけど、結局、後の世にイコン崇敬は復活することになった。
まとめ
- コンスタンティノープルは何度も攻め込まれながら「ギリシア火」で防衛に成功
- 「崇拝」と「崇敬」がイコノクラスムを呼ぶも、結局後の世にはイコン崇敬は復活
参考資料
- 中谷功治(2020).ビザンツ帝国-千年の興亡と皇帝たち 中公新書.
参考記事
気になる記事からチェックしてくれ~。
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