今回は、東ローマ帝国、すなわちビザンツ帝国の歴史について見ています。
ビザンツ帝国①│「東ローマ帝国」の誕生/コンスタンティノープル……どこ?
前回までの記事はこちらをチェックしてくれ~
「ビザンツ帝国」の名前の由来や、
帝国の千年を彩る数々の王朝を見ていこう。
「ビザンツ」はややこしい
「ビザンツ帝国」の「ビザンツ」って何マボか。
これが、ビザンツ帝国の由来。
ただし、少しややこしい背景があってだね……。
ビザンツ帝国という呼び名は正式なものではない。
正式な呼称は、帝国とは名ばかりの弱小国となってからでも「ローマ人の帝国」であった。
つまり古代の「ローマ帝国」が滅びることなく続いているとの建前が維持されていたのである。
そして、通称の表記にも揺れがある。
「ビザンツ」というのはドイツ語が起源で、コンスタンティノープルの古い名前「ビザンティウム」(ギリシア語だとビュザンティオン)を指す言葉に由来する。
おそらく、明治期以後の日本のヨーロッパ史研究者たちが、
ドイツ語文献を読むなかでビザンツとはじめて遭遇し、
その結果「ビザンツ帝国」と呼ぶのが慣例となったのだろう。
以上は歴史学での話である。
ところが、おおむね英語が研究上の共通語であった戦後の西洋美術史の分野では、
この国は「ビザンティン帝国」、さらに形容詞だけで「ビザンティン」と呼ばれる。
中谷功治(2020).
ビザンツ帝国-千年の興亡と皇帝たち 中公新書.
※ビザンティン美術の例
キリストと11世紀の皇帝コンスタンティノス9世夫妻のモザイク画
(アヤソフィア、イスタンブール)
後の時代の研究者が「ビュザンティオン」に由来して、「東ローマ帝国」を「ビザンツ帝国」と呼ぶようになった、ということだね。
というわけで、この記事でも、ここから先は「ビザンツ帝国」という呼称を使うことにするよ。
千年の年表
つまり、ビザンツ帝国を支配する「王朝」も変わっていった、というわけだ。
というわけで、コンスタンティヌス1世移行、
帝国の千年を支配する歴代王朝がどのように移ろっていったかを並べると、次のようになる。
〔ビザンツ帝国の前身=分裂前のローマ帝国(~395)〕
- コンスタンティヌス朝 (306~363)
- ウァレンティニアヌス朝(364~378)
- テオドシウス朝(379~457)
〔ビザンツ帝国=分裂後の東ローマ帝国(395~1453)〕
※一部時期が連続していないのは、皇帝位に空位の期間があるため
- テオドシウス朝(379~457)
※ローマ帝国が分裂する前からテオドシウス朝は存在しており、分裂後も同王朝が続いた。
- レオ朝(457~518)
- ユスティニアヌス朝(518~602)
- ヘラクレイオス朝(610~711)
- イサウリア朝(717~802)
- ニケフォロス朝(802~813)
- アモリア朝(820~867)
- マケドニア朝(867~1056)
- コムネノス朝(1057~1059)
- ドゥーカス朝(1059~1081)
- コムネノス朝(1081~1185)
- アンゲロス朝(1185~1204)
- ラスカリス朝(ニカイア帝国)(1204~1261)
- パレオロゴス朝(1261~1453)
多いマボ~!
今回の記事のシリーズでは、次回以降、かいつまんで、次の皇帝を見ていく予定だよ。
ユスティニアヌス1世:ユスティニアヌス朝(518~602)
※ユスティニアヌス1世のモザイク画(サン・ヴィターレ聖堂、ラヴェンナ)
ヘラクレイオス1世:ヘラクレイオス朝(610~711)
※ヘラクレイオス1世のソリドゥス金貨
Heraclius – Wikipedia(last visited Oct. 15, 2022)
レオーン3世(左)と息子コンスタンティノス5世(右):イサウリア朝(717~802)
※レオーン3世とコンスタンティノス5世のソリドゥス金貨
Wikipedia「レオーン3世」(2022年10月15日確認)
バシレイオス2世:マケドニア朝(867~1056)
※異民族を平伏させる軍装のバシレイオス2世(復元画)
(国立歴史博物館、アテネ)
コンスタンティノス11世:パレオロゴス朝(1261~1453)
※コンスタンティノス11世像
(国立歴史博物館、アテネ)
Wikipedia”Constantine XI Palaiologos”(2023年1月28日確認)
さて、前回の記事では帝国が分裂する4世紀のテオドシウス朝までのところを見てきた。
まとめ
- 「ビザンツ帝国」はコンスタンティノープルの前身の都市「ビュザンティオン」に由来
- 「ビザンツ帝国」は世界史でよく使われる一方、美術では「ビザンティン」という呼び名も
- コンスタンティヌス1世移行、約千年間、帝国が続いていく
参考資料
- 中谷功治(2020).ビザンツ帝国-千年の興亡と皇帝たち 中公新書.
参考記事
気になる記事からチェックしてくれ~。
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