前回に引き続き、
ヘンな絵ばっかり描いている奇想の画家
についてのお話です。
岩佐又兵衛(いわさまたべえ)、
狩野山雪(かのうさんせつ)
を扱ったね。
前回までの記事はこちらをチェックしてくれ~。
目次
白隠慧鶴:禅宗の放つ自由な画風!
臨済宗のお坊さん
臨済宗(りんざいしゅう)の中興の祖。
禅宗のお坊さんだ。
禅宗について知りたい人はこちらをチェックしてくれ~。
若冲(じゃくちゅう)、
蕭白(しょうはく)、
芦雪(ろせつ)
などに影響を与えたとも言われている。
白隠慧鶴
『達磨図』
(萬壽寺、大分)
額は広いし、襟は飛び跳ねてますし。
それらもすべてこの勢いの一部のように感じられるよね。
公案と禅画
白隠慧鶴
『隻手』
(久松真一記念館、岐阜)
これがどうしたんですか。
悟りを導くための問答として
「公案(こうあん)」
と呼ばれるものがある。
難しいお題を出して、その答えを考えさせるというもの。
「隻手音声(せきしゅおんじょう)」
というものがある。
両手を叩くと音がするよね。
片手では
どんな音がするかな?
か、考えさせられますね。
何か意味があるんですか。
そんな目でさっきの「隻手」の絵を見てごらん。
さきほどの公案との文脈も相まって、
ただの片手の絵が意味を持つようになる。
現代美術に通ずるものがあるよね。
伊藤若冲:趣味の絵画をとことん探求! 驚きの鶏おじさん
京都の裕福な青物問屋の長男。
23歳で家業を継いだはずが、
40歳のときにこれを投げ出して隠棲する。
江戸の写生画といえば円山応挙(まるやまおうきょ)
だというのは前回の記事でも話したけれど、
応挙以前から写実的な絵画を描いていたのが若冲だ。
伊藤若冲
『雪中雄鶏図』
(細見美術館、京都)
ってイメージがありますね。
コケコケまんぼう。
本来はただ空白であるはずの白色が、
若冲にかかれば雪となって実体を持つ。
鶏の尾の先にある竹笹が雪の重みでしなっているのも、
雪へ質感を与えていますよねえ。
伊藤若冲
『虎図』
(エツコ&ジョー・プライスコレクション、ロサンゼルス)
その一本一本の体毛の繊細さに注目すると、
若冲にどれほどの技量があったのかがわかる。
とぼけた顔に騙されるところでした。
中国画を写して作られたはずなんだけど、この皮の質感を生み出しているというのが、また恐ろしいところ。
曽我蕭白:けばけばしさと激しさと
伊藤若冲より15歳年下の同時代人。
曽我蕭白
『群仙図屏風』
(ぐんせんずびょうぶ)(文化庁)
仙人の乗る龍や波の水墨描写が生みだすアクの強さがたまらない。
曽我蕭白
『唐獅子図』
(朝田寺、三重)
右側の唐獅子なんて、腹立つ顔してますよ、はてはて。
長沢芦雪:流れるように自由なタッチ
円山応挙門下の人間。
奔放なタッチが印象的だ。
長沢芦雪
『雲龍図』
(西光寺、松江)
長沢芦雪
『雲龍図』
(西光寺、松江)
さっと雲を引き裂く龍はカッコいいですねえ!
長沢芦雪
『虎図襖』
(無量寺・串本応挙芦雪館、和歌山)
確かな技術に裏打ちされているのがわかるね。
まとめ
- 白隠慧鶴:遊び心溢れる独特の絵。禅僧らしい「公案」の禅画も
- 伊藤若冲:鶏大好きおじさん。でもその写実の技量は天下一品
- 曽我蕭白:けばけばしい色使いと激しいタッチ!
- 長沢芦雪:流れるような水墨画
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参考資料
- 辻惟雄(1970)『奇想の系譜』(美術出版社)
- 美術検定実行委員会編(2008)『西洋・日本美術史の基本』(美術出版社)
- 山口晃(2012)『ヘンな日本美術史』(祥伝社)
- 山下裕二監修(2019)『奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド』(日本経済新聞社、NHK、NHKプロモーション)
価格:1,430円 |