今回は、カラヴァッジョを通してバロックの世界を見ています。
前回までの記事は、こちらをチェックしてくれ~。
カラヴァッジョの手掛けた静物画とリアリズム、
そして、カラヴァッジョの影響を受けた画家たちを見ていくよ。
静物画とヴァニタス
カラヴァッジョ『果物籠』
(アンブロジアーナ絵画館、ミラノ)
そして、その次の時代のバロック期には、
『静物画』というジャンルが市民権を得たんだ。
ヨーロッパでは近代に至るまで、
伝統的に価値の低い絵画ジャンルとみなされていた静物画であるが、
イタリアではとくにそうしたジャンル別のヒエラルキーがはっきりしており、
ルネサンス以降、このように独立したかたちで描かれることは稀であった
(中略)
同時代人の記録によれば、画家〔カラヴァッジョ〕は
「静物を描くのは人物を描くのと同じ価値がある」
と宣言してはばからなかったという。
卓越した明暗画法により、あたかもそこに存在するがごとく生き生きと描かれた果物は、
北方の写実精神とともに、彼の宗教画にも共通して見られる、
光のドラマティックな効果を発揮している。
他方、虫に食われた果肉や枯れ葉の描写は、
束の間の快楽がもつはかなさ(ヴァニタス)という寓意をもわれわれにひそかに教えているのである。
大塚国際美術館編(1998)
『西洋絵画300選』
(有光出版)
静物画やヴァニタスといえば、バロックの時代、
オランダやベルギーを中心とするフランドル地方で流行した主題だけど、
カラヴァッジョもまた、『果物籠』を中心に多くの静物画を描いているよ。
聖と俗の交じり合うリアリズム
カラヴァッジョ『聖マタイの召命』
(サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会、ローマ)
カラヴァッジョの特徴だったね。
なんだか「じゃじゃーん」と劇的な雰囲気があるマボねえ。
聖書の世界を描いているわりに、
椅子に座っている登場人物たちはどうも、
イエスと同時代の人たちの格好には見えない。
絵画の中で、カラヴァッジョの生きていた時代の服を着ている人たちを見ると、
この絵は、一種の風俗画のようでもある。
日本の絵画で、戦国時代の人が洋服来てたら、変な感じがするはずマボ。
カラヴァッジョの影響とそのフォロワー
バロックの巨匠たち
レンブラント『夜警』
(アムステルダム国立美術館、アムステルダム)
フェルメール『真珠の耳飾りの少女』
(マウリッツハイス美術館、デン・ハーグ)
ジョルジュ・ド・ラ・トゥール『聖ヨセフ』
(ルーヴル美術館、パリ)
ルネサンスとの連続性よりも、カラヴァッジョとの関係性が感じられないかな。
カラヴァッジェスキ
ヘラルト・ファン・ホントホルスト 『取り持ち女』
(ユトレヒト中央博物館、ユトレヒト)
似てるマボけど。
「カラヴァッジェスキ」
と呼ばれる画家たちの一人の作品だ。
イタリアをはじめ、
ヨーロッパのいたるところにカラヴァッジェスキはいたんだけど、
中でもオランダでからローマを訪れた留学生たちは、カ
ラヴァッジョの作品の影響を受け、
「ユトレヒト・カラヴァッジョ派」
と呼ばれたんだ。
ディルク・ファン・バビューレン『取り持ち女』
(ボストン美術館、ボストン)
小さくまとまった町であるユトレヒトにこれだけのムーブメントが沸き起こったんだね。
カラヴァッジョ『女占い師』
(ルーヴル美術館、パリ)
影響という意味では、先に紹介した巨匠たちもある意味「カラヴァッジェスキ」と言える。
まとめ
- 聖書やギリシャ・ローマ神話の歴史がから離れた静物画や風俗画といったジャンルも描く
- カラヴァッジョの同時代の服装を歴史画で表し、聖と俗の入り混じるリアリズムを描いた
- バロック時代の多くの巨匠へ影響を与えるとともに、カラヴァッジェスキと呼ばれるフォロワーを、ユトレヒトをはじめとした各地に生んだ
参考資料
- 大塚国際美術館編(1998)『西洋絵画300選』(有光出版)