今回はマンボウも大好きな
フェルメール
について解説してもらえると聞いています。
フェルメール
『絵画芸術』(『絵画の寓意』)
(ウィーン美術史美術館、ウィーン)
フェルメール
『牛乳を注ぐ女』
(アムステルダム国立美術館、アムステルダム)
「部屋の中で女の人がなにかしている」
様子を描いているような。
牛乳そそいだり、こっちを向いていたり。
その意味がわかったら、もっとフェルメールがおもしろくなるかもしれませんね、はってはて♪
ドラマチックなバロック! でもフェルメールは穏やかで……
オランダのデルフトという町で生まれた。
フェルメール
『デルフトの眺望』
(マウリッツハイス美術館、デン・ハーグ)
「バロック」
と呼ばれる。
カラヴァッジョ
『聖マタイの召命』
(サン・ルイジ・デイ・フランチェージ教会、ローマ)
聞き覚えがあるような。
キリスト教世界へ新しい宗派であるプロテスタントが出てきた。
昔からの勢力であるカトリックは、布教のためにドラマチックな絵画を必要とした。
その一方、プロテスタント世界では穏やかな絵画も見られた。
フェルメール
『音楽の稽古』
(ロイヤル・コレクション、バッキンガム宮殿)
フェルメール
『青衣の女』
(アムステルダム国立美術館、アムステルダム)
絵画のパトロンは教会ではなく裕福な市民層だから、
これをターゲットとした肖像画や風俗画が好まれた。
オランダはキリストやマリア像を礼拝することを偶像崇拝として禁じていたプロテスタントの国であり、
また、美術の担い手が市民階級であったことから、
市民にとって現実的で、分かりやすく、親しみやすい作品が求められました。
その結果、
小型の風景画、風俗画、静物画が独立したジャンルとして発達し、
ネーデルラント絵画の特徴となりました。
早坂優子(2006)
『鑑賞のための西洋美術史入門』
(視覚デザイン研究所)
カラヴァッジョみたいな「ででーん!」とした派手な絵……
ではなかったというわけですか。
カラヴァッジョの『キリストの埋葬』は3メートル×2メートルだけど、
フェルメールには縦横が1メートルにも満たないが多い。
絵画のジャンルにもランキングがあった!? 歴史画が支配するアカデミー
フェルメール
『マリアとマルタの家のキリスト』
(スコットランド国立美術館、エディンバラ)
その入会にあたって描いたと言われるのが、
『マリアとマルタの家のキリスト』。
聖書の「ルカ福音書」からのエピソードを題材にしている。
「聖書」「ギリシャ・ローマ神話」
ばっかりテーマにしていますよねえ。
「絵画世界でもっともすぐれたテーマとされたのが歴史画」
だったからだ。
フェルメールに帰属
『聖プラクセディス』
(国立西洋美術館、東京)
「聖人」
「ギリシャ・ローマ神話」
にまつわるエピソードをテーマとしたのが歴史画。
これらは絵画アカデミーの花形だったんだ。
かつて、絵画にはジャンルによるヒエラルキー(階級分け)がありました。
一番偉い絵は歴史画(物語画)、
次が肖像画、
そして風俗画(市井の人人の日常の情景)、
続いて風景画、静物画、動物画でした。
なぜ、歴史画が一番偉いか?
神に似せて創られた人間こそが、命あるものの中で最も優れている。
さらに、複数の人物を再現して歴史や物語を描いたもののほうが単なる肖像画よりも凄いじゃないか。
だから、古代の神話や聖書の物語を描いた「歴史画(物語画)」が最高位のジャンルなのです。
早坂優子(2006)
『鑑賞のための西洋美術史入門』
(視覚デザイン研究所)
あ、でもさっきは、
「小型の風景画、風俗画、静物画が独立したジャンルとして発達し、
ネーデルラント絵画の特徴となりました」
とか言ってましたよね。
明らかに、若い画家フェルメールにとっては、画家組合の入会にあたって、
「修養を積んだ画家」(pictor doctus)として、
芸術界における”decorum”、
つまり規範に適ったしかるべき性格を持つ高尚な対象物を描く能力があると証明することが重要なことだと思った(あるいはそれが求められていた)のである。
ノルベルト・シュナイダー(2000)『フェルメール』
(タッシェン・ニュー・ベーシック・アート・シリーズ)
「プロに実力をどう認めさせるのか」では、
ちょっと話が変わってくる。
平たく言えば、芸術家の組合に入るにあたっては、
「ちょいと歴史画ぐらい描いてやって、こっちの実力、認めさせてやるか」
ぐらいに考えたんじゃないかな。
まとめ
- フェルメールはバロック時代のオランダの画家
- カトリックの世界では劇的な表現が好まれる一方、プロテスタントの世界では穏やかな絵画
- 絵画のヒエラルキーは、歴史画、肖像画、風景画、風俗画、静物画、生物画
- フェルメールは主に、風景画、風俗画を描いた。
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参考文献
- ノルベルト・シュナイダー(2000)『フェルメール』 (タッシェン・ニュー・ベーシック・アート・シリーズ)
- 早坂優子(2006)『鑑賞のための西洋美術史入門』(視覚デザイン研究所)
鑑賞のための 西洋美術史入門【電子書籍】[ 視覚デザイン研究所 ] 価格:1,642円 |