今回は、
「キリスト教絵画のお約束」
シリーズ第3弾。
前回までの記事はこちらをチェックしてくれ~。
羊
良き羊飼いのためのアトリビュート
ムリーリョ『善き牧者としての幼児キリスト』
(プラド美術館、マドリード)
「私は良き羊飼いである」
と聖書の中で言っている。
イエスは信徒を導く羊飼いに、自分に従う人々を羊にたとえているんだ。
羊と牧杖(ぼくじょう)はイエスのアトリビュートと言える。
将来の受難を表すシンボル
スルバラン『神の子羊(アグヌス・デイ)』
(プラド美術館、マドリード)
キリスト教において、羊は、イエスの犠牲や受難を表すシンボルとして描かれることがある。
鳩
聖霊としてのシンボル
レオナルド・ダ・ヴィンチ『キリストの洗礼』
(ウフィツィ美術館、フィレンツェ)
という聖書の記述から、
「鳩は聖霊のシンボル」
とされている。
「神から人へ授けられる聖なる霊」だ。
「三位一体(さんみいったい)」
って聞いたことあるかな。
父、子、聖霊の三位一体
エル・グレコ『聖三位一体』
(プラド美術館、マドリード)
救世主イエスは十字架にかけられて死んでしまいます。
イエスの死後、信者たちは聖霊からインスピレーションを受けるようになりました。
というわけで、クリスチャンには信じるべき霊的存在が三つあることになりました。
ユダヤ教伝来の神、
イエスがそうであろうとされるメシア=キリスト、
イエス亡きあとの聖霊、の三つです。
ユダヤ教伝来の神は「父」、救世主イエスは「子」とも言われます。
整理しますと、
- 父……ユダヤ教の唯一神に由来する存在
- 子……メシア(=キリスト)とされたイエスのこと
- 聖霊…信者に働きかける霊
中村圭志(2017)『知ったかぶりキリスト教入門 イエス・聖書・教会の基本の教養99 』(幻冬舎新書)
そんな重要な要素の1つのシンボルとして、はとぽっぽを拝んでいたのねえ。
メシアはヘブライ語、
キリストはギリシャ語で、
それぞれ「救世主」の意味だ。
そのままイエスのことを指す。
魚
『最後の晩餐』
(サンタポリナーレ・ヌオーヴォ聖堂、ラヴェンナ)
「イエス、キリスト、神の、子、救い主」
という5つの単語の頭文字をつなげると、
魚を表す「イクティス」という単語になるんだ。

ジェームズ・ティソ『奇跡の漁(すなどり)』
(ブルックリン美術館所、ニューヨーク)
ペテロに命じて漁をさせると網がやぶれんばかりの魚が取れた」
という逸話など、イエスには魚にまつわるエピソードがたくさんある。
魚はイエスを表すシンボルとして用いられることになった、というわけだね。
ロバ

ジョット『エルサレム入城』
(スクロヴェーニ礼拝堂、パドヴァ)
ロバに乗ってエルサレムに入る場面は、ヘブライ語聖書の預言と結び付けて、イエスをメシアとして示すものと解釈されてきた。
このことから、城に向かってロバにまたがる男はイエスとわかる。
いばらの冠、十字架、そして「INRI」の文字とは……
弟子の裏切りに遭うなどして処刑されることが決まってしまう。
クェンティン・マセイス『エッケ・ホモ(この人を見よ)』
(プラド美術館、マドリード)
「おまえはユダヤの王だというなら、冠を被れ!」
ということで、イエスは血を流しながらいばらの冠を被らされる。
いばらの冠は、処刑の際のイエスを表すアトリビュートとなった。
ラファエロ『モンドの磔刑図』
(ナショナル・ギャラリー、ロンドン)
自ら運んだ十字架に両手足を釘付けにされ、磔となった。
だから、十字架は磔のイエスのアトリビュート。
十字架に「INRI」という文字が書いてある。
どういう意味まぼか。
「ナザレのイエス、ユダヤの王」
を意味する文章の頭文字をとったもの。
福音書では、ピラトがこの罪状書きを十字架に掲げたとされている。

ベラスケス『十字架上のキリスト』
(プラド美術館、マドリード)
ヘブライ語、
ラテン語、
ギリシャ語で
それぞれ罪状が描かれている。
IESVS NAZARENVS REX IVDAEORVM
「ナザレのイエス ユダヤの王」
(イエズス・ナザレヌス・レックス・ユダエオルム)
ラテン語ではVとUの音に違いが無かったり、
IとYとJの音に違いが無かったりする。
アンドレア・マンテーニャ『キリストの磔刑』
(ルーブル美術館、パリ)
グリューネヴァルト『イーゼンハイムの祭壇画』
(ウンターリンデン美術館、コルマール)
こうして意味を知ると、絵画の見方が深まりそうですねえ。
まとめ
- 羊は「良き羊飼い」としてのイエスのアトリビュート、将来の受難のシンボルでもある
- 鳩は「三位一体」の1つの要素である「聖霊」を表すシンボル
- 「イエス、キリスト、神の、子、救い主」という5つの単語の頭文字をつなげた「魚」はイエスのシンボル
- いばらの冠、十字架、そして「INRI」は、イエスの磔刑を表すアトリビュート
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参考文献
- 中村圭志(2017)『知ったかぶりキリスト教入門 イエス・聖書・教会の基本の教養99 』(幻冬舎新書)
- 平松洋(2015)『名画の謎を解き明かす アトリビュート・シンボル図鑑』(KADOKAWA)
- 一冊でわかる 名画と聖書』(成美堂出版)
- 宮下規久朗(2013)『モチーフで読む美術史』(ちくま文庫)
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