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今回は、滋賀県北部の長浜市に来ています。
中でも「湖北」、つまり琵琶湖の北側のエリアは、多くの有名な仏像があるんだよ。
さて、今回はその中でも、国宝に指定される十一面観音立像がある向源寺(こうげんじ)へ行ってみよう。
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湖北の古刹・向源寺
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Google Mapより(2021年5月5日閲覧)
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それに、琵琶湖のほとんど果ての果てマボ!
「湖北」というだけあるわねえ。
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滋賀の北の外れにあるから、小さなお寺だと思ってました、はて。
というわけで、十一面観音像は、向源寺から飛地になる「渡岸寺(どうがんじ)観音堂」に祀ることにしたそうだよ。
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国宝・十一面観音立像
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基本は、正面に化仏(阿弥陀如来)、
頭頂に仏面、
前に菩薩面(慈悲の表情)が三面、
向かって右に忿怒面(怒りの表情)が三面、
向って左に狗牙上出面(くがじょうしゅつめん、白い歯を見せて微笑む)が三面、
後頭部に大笑面(悪行を笑い飛ばす)が一面である。薬師寺君子(2015)『決定版 日本の仏像200 一冊ですべてがわかる!』(西東社)
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しかし、どうしてお顔が十一個もあるマボか。
東南・東北・西南・西北の4つ、
上下に2つ、
そして本尊の顔で、合計11だ!」
という説もあるらしいけど、詳しいところは不明らしい。
とにかく、「菩薩さまには常にあらゆる方角へ救いの手を差し向けてほしい!」という思いが菩薩の顔を増やしたのは確からしい。
さて、それではいよいよ向源寺の十一面観音立像を見てみよう。
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薬師寺金堂日光菩薩の臍には、指を突っ込んでくすぐりたくなるような触覚的な要素が芽生えていたが、そこにはなお古代的な、大々とした造形感覚が息づいていた。
この十一面のそれになると、そういう呑気な、古代的な造形感覚は影をひそめてしまっている。
一層実人的、写実的になったことはもちろんだが、それ以上に鋭い思想性が脈打つようになった。
透鑿(すきのみ)のこまやかな刀法がうかがえるこの臍は、いわば考える臍である。
土門拳(2002)『古寺を訪ねて 東へ西へ』(小学館文庫)より
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お腹のところは、たしかにちょっと触ってみたくなるようなふっくらとした質感がある一方で、おへその先には触るのがためらわれるようなリアルさがあります、マボ。
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- 像の高さは194cm。
- 一本の期から掘り出した檜材の一木彫。台座の蓮肉部や身にまとう天衣まで含め一材から彫出される。
- 頭のてっぺんの「宝髻」の部分の仏が、如来ではなく菩薩となっているのに特色がある。
- 「耳璫(じとう)」という太鼓の胴のような形の耳飾りを付けているのも珍しい。
- 飾り紐が足元まで垂れさがるほど長いのも特色。
Wikipedia「向源寺」を基に作成
(2021年5月5日閲覧)
「そもそも『菩薩』って何?」という人は、別の記事で解説しているのでそちらをチェック。
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暴悪大笑|悪を暴き大いに笑う
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薬師寺君子(2015)『決定版 日本の仏像200 一冊ですべてがわかる!』(西東社)より
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基本的に仏さまは正面から拝むもので、その真後ろの姿を拝むことはないんだ。
ということは、世の中の十一面観音像を拝むとき、もしかしたらその十一面観音像の後頭部には暴悪大笑の面がないかもしれない。
それが無かったとしても、拝む我々にはわからないんだ。
変な話、作り手だって「暴悪対象」の面を彫らないでおくこともできるだろう。
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あらゆるところまで、菩薩の救いの手を差し伸べてほしい、とね。
そして、目には見えないところにある暴悪大笑もまた、ちゃんと彫ってある。
この関係性に、祈りの誠実な思いが表れていると思うんだ。
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今日もどこかで暴悪大笑は、人々の悪い気持ちを人知れず笑い飛ばしているはずマボ。
まとめ
- 向源寺には国宝の十一面観音立像あり。
- あらゆる方角に救済の手を差し伸べてほしいという思いが、十一面観音菩薩を生みだした。
- 十一面観音の後頭部には、人々の悪を暴いた上でこれを大笑いしている「暴悪大笑」の面がある。
参考資料
- 土門拳(2002)『古寺を訪ねて 東へ西へ』(小学館文庫)
- 薬師寺君子(2015)『決定版 日本の仏像200 一冊ですべてがわかる!』(西東社)
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