【イエスさん②】なぜスペインではヘススが人名に?|イスラーム説と「19世紀急増」の謎

こんにちは、はてはてマンボウです。

どうしてスペインでだけヘススさん=ジーザスさんがいるのか、という話を続けています。

 

【イエスさん①】英語では珍しい|なぜスペインでは「人名」になるのか?

 

前回の記事では、
「イスラーム勢力がイベリア半島を支配していた時代があったから、その影響があるんじゃないのか」
という話で終わっていた。

今回は、その続きから。

梓

 

「イーサーさん」がJesusのタブーを弱めた?

そうすると、こんな仮説も立てられる。
梓

イスラームでは、ヘスス=イーサーは「神」ではなく、あくまで「預言者」

イベリア半島でイスラーム統治が始まる。

イベリア社会で、「イエスに対応する名前」が普通の人間につけられる。

「Jesusは人間には付けない」という聖名タブーが、長期間の文化接触のなかで弱まっていく。

イスラームが去った後のキリスト教社会のイベリア半島でも、ヘススが人名として定着する。

おおお……! めちゃくちゃきれいにつながったマボ!

 

同じことを考えている研究者がいた!

でもこれ、思いつきにすぎないマボかね?

ところが、非常によく似たことを論じた研究が、実はあるんだ。
梓

Muscianisi, G. Domenico. (2024) The name Jesus in Iberia: A linguistic and cultural study in onomastic taboo.のアブストラクト

※以下、筆者和訳。

本論文は、子どもに付けることのできるさまざまな名前の中で、
スペイン語圏及びポルトガル語圏だけが「Jesus(イエス)」という名前の使用を確認できる地域である
という事実に着目し、イベリア半島における「Jesus」という名前の分布を扱うものである。

この現象は、いわゆるレコンキスタ(おおよそ720~1492年)※1
すなわちアル=アンダルス王国(アラブ化されたイベリア)の段階的な崩壊という歴史的過程の中に位置づけて考察される。

イエスという聖なる名を人名として使用することに対するタブーについて、
他のキリスト教の伝統との比較を通じて検討し、
社会言語学および言語人類学のアプローチを用いて、
このタブーがどのように「中和(neutralization)」※2 されたのかを説明する。

さらに、同じ理論的枠組みと歴史学的方法を用いて、
近世及び近現代における「Jesus」という名前の状況についても考察を展開する。

※1 筆者注:レコンキスタとは、キリスト教勢力がイスラーム支配下のイベリア半島の取り返していく一連の再征服。

※2 筆者注:中和とは、Jesusを一般人の名前として使うことへの抵抗感やタブーが、次第に弱まっていくこと。

【スペインの歴史を簡単に】③レコンキスタ╿国土回復運動、それとも十字軍?

レコンキスタが気になる方は、こちらの記事もどうぞ!

おお! こりゃあ、学者のお墨付きマボ!

……と言いたいところなんだけどね。

ところが、この論文には大きな問題がある。

肝心の「中世にJesúsと名付けられた人」のデータが、論文中にほとんどない。

梓

はて……するってえと……。

著者自身もそこは認めている。

中世は人口記録そのものが乏しいため、レコンキスタ期にJesusという名前が実際に使われていたことは実証できない、とね。

したがって著者自身も、一連の説明を、現時点では実証されていない仮説として位置づけているんだ。

梓

つまり……仮説はあるけど、それを示す肝心のJesúsさんに関する記録が見つけられていない、ということマボか?

そういうこと。
仮説としてはとてもきれい。
そう、仮説としては……。
梓

と思ったら……?

一方、当時の文書や記録などの一次史料を使った学術研究ではないので、取り扱いには注意が必要なんだけど……。

スペイン語圏におけるJesúsという人名の歴史を調べた興味深いブログ記事がある。

梓

En el nombre de Jesús(2026年9月20日確認)

スペインのJesúsは、16世紀に2人、17世紀に4人、18世紀に196人、19世紀に12,915人確認された。
梓
19世紀になって突然ドカーン!
レコンキスタが終わったずっと後ということマボか?
そもそも、このブログが参照している史料には、時代や地域による偏りがある。ブログの筆者自身も、年代の誤登録などが含まれる可能性を指摘している。

とはいえ、もしJesúsという人名がスペインで本格的に増えるのが18~19世紀なのだとすると、残念ながら、仮説は成り立たない。

梓
さっきまで、きれいな仮説だと思っていたのに……しょぼんマボ。
そうなると、今度は、

なぜ19世紀になって、スペイン語圏でJesúsという名前が増え始めたのか?

という謎について考える必要があるね。

例えばスペイン語圏で、18~19世紀に……

梓

☑ イエスに対する信仰に変化があった?

☑ Jesúsも含め、名付けの流行に変化があった?

といったことを考える必要があるかもしれない。
梓
仮説が間違っていたら、新しい事実に基づいて次の仮説を立ててまた探求……というわけマボねえ。

 

 

 

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