今回のお題は……。
磔刑、はりつけの刑……
想像するだけで痛そうです……
『磔刑図』
(サン・ダミアーノ教会、アッシジ)
平気なのかしらねえ。
グリューネヴァルト
『イーゼンハイムの祭壇画』
(ウンターリンデン美術館、コルマール)
はて~この違い、なぜまぼか~。
近寄りがたいロマネスク
『栄光のキリスト』
(カタルーニャ美術館、バルセロナ)
なんでまぼか。
そうすると、硬直している印象になる。
厳かな神の世界は、近づきがたく、遠くから敬うためのものだったんだ。
自然で写実的な表現では親しみやすくなってしまうので、その逆の表現ということになります。
あんまり人間に近いと、ありがたみが薄れてしまうのです。
早坂優子(2006)
『鑑賞のための西洋美術史入門』
(視覚デザイン研究所)
『磔刑図』
(サン・ダミアーノ教会、アッシジ)
超然とした姿に見えるよね。
『十字架上のキリスト』
(ピサ国立美術館、ピサ)
※画像は大塚国際美術館の展示品
キリストは目を大きく開けて直立の姿勢を保ち、十字架上で生きる、死に打ち勝つ姿として描かれている。
大塚国際美術館・NHK文化センター・有光出版株式会社(1998)
『西洋絵画300選』
(有光出版)
人間らしく優美なゴシック
シモーネ・マルティーニ
『受胎告知』
( ウフィツィ美術館、フィレンツェ)
※画像は大塚国際美術館の展示品
真正面を向いてシンメトリーに描かれていた人々が、
横向きで身体をひねるようになる。
登場人物の感情があらわになってきた。
そうなると絵画の中の人物たちにより共感できるようになってくる。
この絵画様式の変遷を理解するための懸け橋が、磔刑図なんだ。
12世紀から14世紀前半に、
イタリア中部のみに十字架板絵(「十字架上のキリスト」)が独自の発展を見せるが、
その流行がロマネスクからゴシックへの橋渡しとなる。
……キリスト像は、かつての天空に君臨する崇高な存在から、辱められ、虐げられ、苦しみながら死を迎えた現実の姿として現れたのである。
キリストの苦しみはより深く神聖なものとなりえたが、
この写実主義こそがロマネスク美術の概念と表現を打破することになったのである。
大塚国際美術館・NHK文化センター・有光出版株式会社(1998)
『西洋絵画300選』
(有光出版)
ジュンタ・ピサーノ
『十字架上のキリスト』
(サン・ドメニコ教会、ボローニャ)
※画像は大塚国際美術館の展示品
死に打ち勝つ姿ではなく、
痛ましい死を迎えた姿を描くことで、
「人類の罪を贖うために犠牲となったイエスの死」に、
信者たちは深い共感を得られるようになったんだ。
まとめ
- ロマネスク美術は、厳格な表現。神は痛みを感じていない。
- ゴシック美術から人間らしさが生まれ、イエスの表現にも痛ましさが。
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参考文献
- 大塚国際美術館・NHK文化センター・有光出版株式会社(1998)『西洋絵画300選』(有光出版)
- 早坂優子(2006)『鑑賞のための西洋美術史入門』(視覚デザイン研究所)
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