今回は……
『地獄草紙 東京国立博物館本』「雨炎火石」
(東京国立博物館、東京)
じ、地獄マボ~
『往生要集』とは
『恵心源信像』
(聖衆来迎寺、大津)
「極楽に行くためには、念仏が欠かせない!」という主張が書かれていて、その思想は後の浄土宗や浄土真宗へ影響を与えたんだ。
極楽に「往生」するための「重要なポイント」を「集めた」から『往生要集』というわけだね。
でも、極楽に行くための本が、どうして地獄と関係するんでしょうか、はて。
「ほらほら、地獄行きなんてイヤでしょ? みんな、念仏唱えて極楽へ行こうよ!」
と強調できるからね。
そもそも『往生要集』の第1章は「厭離穢土」というサブタイトルで始まるくらいだし、インパクトは強烈だっただろうね。
「厭離穢土(おんりえど)・欣求浄土(ごんぐじょうど)」で、
「汚れた地を嫌い、極楽浄土を追い求めよう」
という意味になる。
この『往生要集』の言葉は、徳川家康の馬印にも使われたんだ。
八大地獄
まず第一章は、いきなり地獄の話から始まる。
人間は六道という輪廻をぐるぐる回っていて、その最下層に地獄がある。
地獄は八層に分かれていて、八大地獄と呼び、その層ごとに、こんなに痛い、苦しい、ひどいことが行われている世界なんだよと、お節介にも、こと細かに描写してくれているのだ。
BEST TIMES「あなたの行先は何地獄? 『往生要集』が案内する地獄の世界」
(2021年8月15日閲覧)
生前に犯した罪によって、これらの小地獄も体験しないといけなくなるシステムになってるんだ。
128の小地獄があるというわけマボか……。
よくもまあ、昔の人はこんなにたくさんのバリエーションを考えたマボねえ、ポケモンじゃあるまいし。
ちなみに、地獄のステージが上がるたび、前の地獄の10倍の苦しみを味わうことになるらしい。
① 等活(とうかつ)地獄
・罪人同士がともに血肉が尽きて骨だけになるまで戦い合う、又は獄卒から鉄棒で粉々にされる
・罪人は死んだと思いきや、涼風が吹くと再び元に戻り、苦難を受け続ける
・人間界の時間で、1兆6653億1250万年の間、苦しみを受けなければならない
・殺生をすると送り込まれる
② 黒縄(こくじょう)地獄
・熱鉄の地面に伏せさせられた罪人は、熱鉄の縄で身体一面縛られ、その縛り痕に沿って体を切り刻まれる
・人間界の時間で、13兆3225億年の間、苦しみを受けなければならない
・殺生+盗みまですると送り込まれる
③ 衆合(しゅごう、しゅうごう)地獄
・牛頭(ごず)・馬頭(めず)といった獄卒に「山間」「葉が剣でできた林」まで追い込まれる
・山間では、山が倒れてきて身体を押しつぶされる
・「葉が剣でできた林」では、樹上にいる女性に誘惑された男たちは、剣の葉で身体を傷つけながら木に登る。
木に登ったと思いきや、女性はいつの間にか木の下に降りているので、また身体を傷つけながら下る。
降りたところで、女性はまた木の上に(以下、無限ループ)・人間界の時間で、106兆5800億年の間、苦しみを受けなければならない
・殺生+盗み+邪淫(じゃいん)まですると送り込まれる
④ 叫喚(きょうかん)地獄 ⑤ 大叫喚地獄
・叫喚地獄では、「頭が金で」「目から火を放ち」「赤い衣を身にまとい」「風のように速く走る」獄卒に、矢で射られる
・泣きわめいて許し乞いをすると、獄卒はかえって怒り狂う
・「鉄棒で頭を粉砕されながら、焼けた鉄の地面を走らされる」
「熱湯の大釜で煮られる」
「猛火に包まれた鉄の部屋に入れられる」
「金鋏でこじあけられた口の中に焼けてどろどろになった銅を流し込む」
といった苦しめを受ける。・人間界の時間で、852兆6400億年の間、苦しみを受けなければならない
・殺生+盗み+邪淫+飲酒まですると送り込まれる
・なお、次の「大叫喚地獄」では釜のサイズがアップするそうで、殺生+盗み+邪淫+飲酒+妄語(嘘をつく)と送り込まれるし、6821兆1200億年を過ごさないといけない
⑥ 焦熱(しょうねつ)地獄 ⑦ 大焦熱地獄
・焦熱地獄では、熱鉄の上で何度もひっくりかえされながら鉄棒で叩き潰されたり、串刺しにされて焼かれたりする
・この焦熱地獄の炎は特別熱く、ここに比べればそれまでの地獄の炎など雪のようなもので、焦熱地獄の火を豆粒程度でも地上に持ってきただけでも地上の全てが一瞬で焼き尽くされる
・人間界の時間で、5京4568兆9600億年の間、苦しみを受けなければならない
・殺生+盗み+邪淫+飲酒+妄語+邪見(仏教と相容れない考えを説く)まですると送り込まれる
・なお、次の「大焦熱地獄」ではさらに熱の温度がアップするそうで、殺生+盗み+邪淫+飲酒+妄語+邪見+犯持戒人(尼僧などを汚す)と送り込まれるし、43京6551兆6800億年を過ごさないといけない
⑧ 阿鼻(あび)地獄
・地獄の最下層にあるので、1つ上の大焦熱地獄から2000年落ち続けてやっと到着する
・阿鼻地獄で受ける苦しみに比べれば、前の七大地獄の苦しみは大海の一すくいの水に等しい、夢のような幸福である
・18の獄卒がおり、64の目を持ち、頭の上には8つの牛頭がついていて、それぞれ猛火を放っている
・大蛇が毒や火を吐きながら雷鳴のように咆哮している
・「抜き出した舌を釘で打って広げられる」「猛火によって、骨の髄まで焼き溶かされ、炎と溶け合う」といった苦しみを受ける
・人間界の時間で、682京1120兆年の間、苦しみを受けなければならない
・殺生+盗み+邪淫+飲酒+妄語+邪見+犯持戒人+父母や聖者の殺害まですると送り込まれる
※石田瑞麿(2013)『日本人と地獄』(講談社学術文庫)を参照
前半で飛ばしすぎたのか、後半になってくるとガス欠になってきて、「大叫喚地獄」辺りはネタ切れ感も出てくるけど。
この地獄に落ちた人たち、地球が消滅するまでに生まれ変われるんでしょうか、はて……。
まとめ
- 様々な経典などに書かれていた地獄観を整理したのが『往生要集』で、後世にも強い影響を与え続けた
- 地獄は8つの種類「八大地獄」に分類されており、下層に行くほど恐ろしい責め苦をより長く受けることになる
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参考資料
- 石田瑞麿(2013)『日本人と地獄』(講談社学術文庫)
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