【紋章/双頭の鷲】ハプスブルク、ビザンツ、ロシアへと続く『ローマ帝国』継承者

シンプルな国旗に比べて、凝った意匠をしているんだ。

さて、このセルビア・モンテネグロとアルバニア……

２つの国章の共通点はわかるかな。

「首が２つある鷲がデザインされている」

ということ。

「双頭の鷲」

について見ていこう。

歴史上さまざまな国で好まれてきた。

「ゼウスが鷲に変身して、美少年ガニュメデスを攫っていく」

というストーリーがある。

11世紀から12世紀にかけて中東に存在したイスラム帝国「セルジューク朝」も、双頭の鷲を採用している。

古代ローマ帝国も国家の象徴として鷲を採用していた。

「『西』と『東』の二つの地域におけるローマ帝国の支配権」

を象徴しているんだ。

ギリシャ地域を中心とする「東ローマ帝国」との２つにローマは分裂していくんだ。

そして「東ローマ帝国」は東西両方の正統な後継者であることを主張していく。

すると、「双頭の鷲」がローマ帝国の象徴となっていくんだ。

一方の「西ローマ帝国」は476年に１度滅亡。

その後、紆余曲折を経て「神聖ローマ帝国」が西ローマ帝国の地位を引き継いでいく。

「皇帝はキリスト教世界の守護者である」

という理念が広まった。

双頭の鷲の中央に位置するキリストの磔刑図はその象徴。

翼の下のさまざまな国章は、帝国内で統治されている国家を表している。

そしてその皇位はハプスブルク家が世襲するようになった。

なので「双頭の鷲」はオーストリアやハプスブルク家の象徴ともなっていく。

やがて神聖ローマ帝国が解体されたあとも、

ハプスブルク家は「オーストリア帝国」の皇位につくんだけど、

やっぱり「双頭の鷲」を採用しているんだ。

ロシアのイヴァン3世は、東ローマ皇帝の姪を妃に迎えていることを根拠に、

「ローマの後継者」

を名乗るんだ。

東ローマ帝国の中心・コンスタンティノープルに続き、

「モスクワは第三のローマである」

なんていう主張もあったくらいだからね。

ロシアはその広い領土が東西に延びていることから、

「①西のヨーロッパ　②東のアジア　の２地域の正統な支配者である」

という意図も双頭の鷲に込めていた。

現在のロシアも双頭の鷲を国章に用いている。

教会の象徴としても双頭の鷲が用いられるようになった。

特に東方教会では、トップである「総主教」と皇帝のつながりが強かったことから、双頭の鷲のモチーフが見られる。

例えば、セルビア王国。

東ローマ帝国が衰退する一方、

「セルビア人とローマ人の皇帝」

を自称して、東ローマ帝国征服を企んでいた。

セルビアやモンテネグロの国章には「双頭の鷲」が採用されている。