【聖書/悪魔/サタン/ルシフェル】研究者の目から見た「悪魔」の世界

こんにちは、はてはてマンボウです。

今回はなんと、専門の研究者の方からご指摘をいただいたので、記事にて紹介することにしました。

こんにちは。

マンボウちゃんの知合いの、とある研究者です。

ユダヤ教の聖書解釈を主に研究しています

今回、ご指摘があったのはこの記事マボ。

 

【聖書/悪魔】サタンとユダと……ペトロが悪魔? ╿西洋絵画の悪魔的な世界①

 

実は、「サタン」っていうのは、安易に解釈しちゃいけない、複雑な概念なんです。

 

今回はその辺のお話をします。

というわけで、読者のみなさん、すみません。

前の記事のご説明に不適切なところがあったようです……。

お詫びして、今回の記事で訂正します、マボ。

必ずしも「サタン=悪魔」ではない

前回の記事では、「聖書」において、

 

イエスを引き留めるペトロが、イエスから、

「退け、サタン」

と言われるシーンが紹介されていましたね。

イェルサレムへ処刑されにいくイエスに対して、

「行っちゃいけませんよ」
と諫めたペトロが、

みんなの前で、
「退け、サタン」
と言われちゃうんですよね。

ペトロ、かわいそう……。

 

イエスは振り返って、

弟子たちを見ながら、

ペテロをしかって言われた、

サタンよ、引きさがれ。

あなたは神のことを思わないで、人のことを思っている」。

(マルコ8:33)

Wikisource「『口語 新約聖書』日本聖書協会、1954年 口語訳聖書 マルコによる福音書」参照

(2021年10月9日閲覧)

『聖ペトロのイコン』

(聖カタリナ修道院、エジプト)

 

このシーンの「サタン」の意味は、恐らく「悪魔」ではありません
なんと!

そうだったんですか!

「悪魔」というよりも、

「邪魔をする人」や「妨害者」という意味でしょう。

 

いわゆる「旧約聖書」の「民数記」でも、

「サタン」は「妨害者」というような意味で使われており、

これと同じニュアンスですね。

 

しかるに神は彼が行ったために怒りを発せられ、

主の使は彼を妨げようとして

道に立ちふさがっていた。

バラムは、ろばに乗り、そのしもべふたりも彼と共にいたが……

(民数記22:22)

 

 

主の使は彼に言った、

「なぜあなたは三度もろばを打ったのか。

あなたが誤って道を行くので、

わたしはあなたを妨げようとして出てきたのだ。

(民数記22:32)

 

Wikisource「『聖書 [口語]』日本聖書協会、1955年 旧約聖書 民数記」参照

(2021年10月9日閲覧)

 

「サタン=ルシフェル」は後世のこじつけ!

「聖書」のサタンの説明に、ルシフェルを持ってくるのは、

端的に言うと、アナクロニズム、

つまり、後代のこじつけなんです。

そ、そうなんですか~は、はて~!

どうして、そんな説明がされることになったんですか?

そもそも、

「lucifer(ルシフェル:ラテン語の読み方だとルーキフェル)」は、

「金星」「明けの明星」を指します。

 

いわゆる「旧約聖書」を構成するパートの1つ「イザヤ書」というものがあり、

その「イザヤ書」のラテン語訳に出てくる語が「lucifer」なんです。

 

ただし、これは「金星」「明けの明星」という意味で、

「悪魔」を指しているわけではありません。

黎明の子、明けの明星よ、あなたは天から落ちてしまった。

もろもろの国を倒した者よ、あなたは切られて地に倒れてしまった。

(イザヤ14:12)

 

Wikisource「『聖書 [口語]』:日本聖書協会、1955年 旧約聖書 イザヤ書」参照

(2021年10月9日閲覧)

 

「サタン=ルシフェル」説を広めるのに大きな影響力を与えたのは、ミルトンの『失楽園』ではないかと思います。

ただ、これについてはあくまで予想ですので、悪しからず

 

ギュスターヴ・ドレによる『失楽園』の挿絵

 

いずれにしても、

いわゆる「旧約聖書」、すなわち「ヘブライ語聖書」の「サタン」は、実は多義語。

 

取り扱い注意なのです!

専門家からのご指摘、たいへん勉強になりましたマボ~。

 

ありがとうございました!

 

まとめ

  • 「サタン」は「悪魔」の他に、「邪魔をする人」「妨害者」の意味をもつ多義語
  • ミルトンの『失楽園』などにより、「サタン=ルシフェル」という印象が生まれた。

 

なんと、この研究者さんのご協力で、

「聖書」に関する記事を書けるようになりました!

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