ビザンツ帝国⑦│なぜ、教皇「ウルバヌス２世」の「十字軍」呼びかけと関係が？

今回の時代は、前回のバシレイオス２世から70年ほど下った、11世紀末。

ビザンツ帝国と十字軍の関係について見ていこう。

さて、帝国の領土を回復したバシレイオス２世だったが、彼の後、内乱に加えて、セルジューク朝のトルコ人に小アジアを奪われるなど、ビザンツ帝国はぱっとしない日々が続く。

そんな中、1081年、アレクシオス１世が皇帝に即位。
新たに「コムネノス朝」が興る。

さて、アレクシオス１世が即位する少し前……。

バシレイオス２世が崩御した少し後の1038年に建国されたトルコ系イスラーム王朝であるセルジューク朝、

そして、セルジューク朝の地方政権から1077年に独立したルーム・セルジューク朝は、
ビザンツ帝国を圧迫してきた。

ルーム・セルジューク朝は、1078年より、首都をニカイアに定めた。
ここは、長らくビザンツ帝国の都市だったんだ。

ちなみに、「ルーム・セルジューク朝」の「ルーム」は「ローマ」を意味している。
ビザンツ帝国領だったアナトリアの地を奪い、ここを拠点としたことから、ルーム・セルジューク朝と呼ばれるようになったんだ。

ビザンツ帝国に迫りつつあるトルコ。

そこで、アレクシオス1世が助けを依頼したことにより、
1095年にフランス中部で開催されたクレルモン教会会議でローマ教皇ウルバヌス2世が呼びかけをし、

1096年、第１回十字軍が結集することとなった。

表向きは聖地エルサレム奪還が目的だったが、
その背景にはビザンツ帝国がセルジューク朝からの軍事的支援を要請したことも大きく関わってたんだ。

たしかに、十字軍の力はかなりのもので、ビザンツ帝国はルーム・セルジューク朝の手からニカイアを取り戻すことはできた。

だけど、ビザンツ帝国自体が、十字軍の通り道になってしまったことで、十字軍による略奪に遭うことにもなってしまったんだ。

ニカイアこそビザンツ帝国の手元に返ってきたものの、ニカイア征服の際、十字軍は投石機でセルジューク兵の首をばらまいて威嚇するなどしている。

現代の価値観で当時の人たちの常識を測るべきではないかもしれないけど、とはいえ、まあ滅茶苦茶な連中の集まりだったんだろうとは思う

他にも十字軍は、アンティオキアという、これまた重要な都市を征服するんだけど、ビザンツ帝国に引き渡すどころか、「アンティオキア公国」まで建国する。

ちなみに、アンティオキア征服の際にも、やはり虐殺が起きていたらしい。

アレクシオス１世の功績を継いだのが、息子にしてコムネノス朝の第２代皇帝であるヨハネス２世だ。

ヨハネス２世は、ルーム・セルジューク朝に占領されていたアナトリア領の多くを回復すると、
1137年にはアンティオキア公国を屈服させることに成功した。

ところが、この名君は、狩猟の途中に誤って毒矢を自分に刺し、亡くなってしまう。

第1回十字軍は、確かにエルサレム王国やアンティオキア公国など独自の十字軍国家を建設し、必ずしもビザンツの思惑通りには進まなかった。

しかし、その過程でビザンツはニカイアや小アジア西部のいくつかの要地を回復することに成功した。

アレクシオス１世の後を継いだヨハネス２世は、この成果を基盤に帝国の領土と影響力を拡大し、

「コムネノス朝の栄光」

と呼ばれる時代を築いた。

しかしその死後、帝国は斜陽に向かってしまう……。

さて、次回は第４回十字軍による”滅亡”と、地方政権を見ていくことにしよう。