ルノワールの柔らかさ vs セザンヌの硬質さ|静物画と人物画で紐解く魅力

こんにちは、はてはてマンボウです。

今回のテーマは……。

ルノワールとセザンヌの絵画を比較していくよ。

この2人は、2025年に開かれた三菱一号館美術館の企画展でも取り上げられたんだ。

梓

 

ルノワール×セザンヌ ―モダンを拓いた2人の巨匠|三菱一号館美術館

出所:三菱一号館美術館「ルノワール×セザンヌ ―モダンを拓いた2人の巨匠
(2025年9月20日確認)。

ルノワールとセザンヌ……。

なんとなく名前は聞いたことがありますが……。

どんな話を聞けるのか楽しみです。

ルノワールとセザンヌ ― 柔らかさと構築性の対比

ルノワール:柔らかく親しみやすい光

ピエール=オーギュスト・ルノワール

 

ルノワールは、1841年、フランスのリモージュで生まれた。
比較的下層の手工業者の家庭で育つことになる。

幼い頃から絵を描くことに興味があったルノワールは、若い頃にパリに引っ越し、
モネやシスレーら「印象派」を名乗る仲間と出会うことで、
明るい色や軽やかな筆使い、輪郭の曖昧さを取り込んでいった。

梓

ピエール=オーギュスト・ルノワール『ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏会』
(オルセー美術館、パリ)

あ、これは見たことがありますマボ!

なんだか明るくて楽しいけど、優美さもある感じねえ。

ルノワールは木漏れ日の下で踊る人々を、やわらかな筆致と明るい色彩で描いた。

輪郭線はあえて曖昧にし、
人物同士や背景の自然が溶け合うように描かれており、
絵全体から幸福感が漂っているよね。

絵を見るだけでなんだか楽しくなってくるのは、ルノワールの魅力だよね。。

梓

 

セザンヌ:形を積み上げる探求

ポール・セザンヌ

一方、セザンヌはルノワールよりも2年早い1839年生まれ。

南フランスのエクス=アン=プロヴァンス出身。

父親は銀行業を営む裕福な家庭で、経済的に安定していたものの、画家になることには家族の反対もあった。

セザンヌもパリに行き、印象派の画家たちや風景画家の影響を受ける。

だけど、自分の道を模索する中で、印象派を離れていき、
形と色の構造を重視する方向に進む。

父親との確執や、画壇での評価の遅れなどを経験しながら、
南仏の田園風景や果物など静物を繰り返し描くことで、
自分のスタイルを育てていった。

梓
この人生からして、既にルノワールの温かい印象と違う、
実直で硬質な雰囲気が漂っているマボ……。

ポール・セザンヌ『リンゴとオレンジのある静物』
(オルセー美術館、パリ)

 

セザンヌの静物画は、
一つひとつの果物やテーブルを幾何学的に捉え
積み木のように安定感を持たせて描かれている。

色彩は落ち着いているけど、
色の重なりで形が「ずっしりとそこに存在する」ことを強調している。

光や瞬間の雰囲気よりも、
対象の本質をどう構築的にとらえるかに関心が向けられてるんだ。

梓
たしかに、この絵も暖色で描かれていますが、
ふわふわした感じはあまりないですねえ。
セザンヌは印象派の色彩や外光の影響を受けつつも、
風景や静物をただ写すのではなく、
その構造を画面に組み込むことを追求した。

色の積み重ねや複数視点、
遠近法の曖昧さなどを作品に取り入れ、
「ポスト印象派」と言われる独自の道を切り拓いたんだ。

梓
ほうほう。

ざっくりまとめますと……。

  • ルノワール:やさしい空気感
    ……柔らかく、楽しく、感覚的。
  • セザンヌ:どっしりとした形の探求
    ……堅実で、探求的、構築的。

 

それじゃあ、ここからは二人の作品を見ていこう!
梓

ルノワールの「柔らかさ」を感じさせる作品たち

以下の作品は、オランジュリー美術館に収蔵されているルノワールの代表作。

それぞれにやわらかであたたかな印象があふれているよ。

梓

『桃』

白い器と柔らかな光、
桃のふんわりした質感が繊細に描かれています。

まるで触れられそうな柔らかさが魅力的ですねえ。

『チューリップ』

赤や緑、黄色のチューリップが大胆かつやさしく描かれているね。

背景も滲むようなタッチでまとめられているのがまた、優雅な雰囲気になっているよ。

梓

『2人の少女の肖像』

 

左の少女が話すように顔を上げ、右の少女が寄り添うようなポーズ。

親しみとやわらかさを感じさせる心あたたまる一枚です。

静物画で見るルノワールとセザンヌ

さて、ルノワールの優美な雰囲気の絵画を並べたところで、ここからはセザンヌとの対比をしていこう。

まずは、静物画から。

梓

ピエール=オーギュスト・ルノワール『花瓶の花』
(オランジュリー美術館、パリ)

 

透明な花瓶に生けられたバラや白い花が、淡い背景に浮かび上がります。

あいかわらず、色彩が優美ねえ。

ポール・セザンヌ『青い花瓶』
(オルセー美術館、パリ)

はて!

ここまでルノワールに目が慣れていたから随分と印象が変わりました。

青い花瓶と果物がバランスよく配置され、
色彩と形の構成で静物に存在感を与えている。

対象の構造を視覚的に探求する姿勢がうかがえるね。

梓

人物画で見るルノワールとセザンヌ

ピエール=オーギュスト・ルノワール『ピアノの前の少女たち』
(オルセー美術館、パリ)

 

またまたルノワールに戻ったマボね!
流れるような柔らかいタッチで描かれた少女たちが、
楽器と調和している優雅な情景。

背景は控えめで、少女たちのしなやかな動きと表情に自然と視線が集まるよね。

では、今度はセザンヌを……。

梓


ポール・セザンヌ『庭のセザンヌ夫人』
(オランジュリー美術館、パリ)

シンプルなのに、冷静で存在感のある印象の絵マボねえ。
表情は静かで、
構造的な構図と筆致が物質感と立体感を強調し、
抑制された緊張感が漂っているね。
梓

 

 ルノワールの「柔らかくない一面」

さて、ここまでやわらかいルノワールと構造的なセザンヌという対比で見てきた。

そんな中、最後は、
「あれ、ルノワール?」
と思えるような1枚を。

観客席の桟敷席に飾られた花束を描いた静物画だ。

梓

ピエール=オーギュスト・ルノワール『桟敷席の花束』
(オランジュリー美術館、パリ)

こりゃあたしかに、ルノワールと言われないと分からないマボ。
いつものルノワールに比べて、
光のふわっとした柔らかさが薄い感じがするよね。
これにはいくつか理由が考えられる。
梓
  • 花束の部分の細かい筆使い
    ……輪郭をぼかすというよりも、形をはっきり感じさせるような筆の勢い
  • 構成の省略と単純化
    ……「桟敷席」「赤い椅子」など必要最小限の要素のみで構成され、
    花束と周囲の環境が混ざり合うあいまいさが少ない。

 

ルノワールもこのような筆致の広がりを試しながら絵を描いていた、ということなんだろうね。
梓
2人の絵を比べることでそれぞれの特徴が分かりますし、

本人が違った筆致を描いたときにも「なんでかな?」と考えやすくなりますマボねえ。

まとめ

  • ルノワールの柔らかさは、滲むような光・色彩と滑らかな筆致のおかげ。
  • セザンヌの硬質さは、色面と構造的筆致から生まれている。
  • 『桟敷席の花束』のように、ルノワールが硬質で緊張感ある構成も見せていたことも。