

セルビア・モンテネグロの国章

アルバニアの国章

シンプルな国旗に比べて、凝った意匠をしているんだ。
さて、このセルビア・モンテネグロとアルバニア……
2つの国章の共通点はわかるかな。
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「首が2つある鷲がデザインされている」
ということ。
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「双頭の鷲」
について見ていこう。
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目次
強さの象徴としての鷲
歴史上さまざまな国で好まれてきた。
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鷲は、その大きさと勇猛な性質から鳥の王者とされ、信仰の対象にもなった。
ゼウスの整鳥であり、キリスト教では福音書記者ヨハネの持物であった。
宮下規久朗(2013)
『モチーフで読む美術史』
(ちくま文庫)
レンブラント『ガニュメデスの誘拐』
(ドレスデン国立美術館、ドレスデン)
「ゼウスが鷲に変身して、美少年ガニュメデスを攫っていく」
というストーリーがある。
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セルジューク朝の国章
11世紀から12世紀にかけて中東に存在したイスラム帝国「セルジューク朝」も、双頭の鷲を採用している。
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アメリカの国章

「ローマ」の後継者① 東ローマ帝国

ローマ帝国の国章
古代ローマ帝国も国家の象徴として鷲を採用していた。
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東ローマ帝国の紋章

「『西』と『東』の二つの地域におけるローマ帝国の支配権」
を象徴しているんだ。
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ギリシャ地域を中心とする「東ローマ帝国」との2つにローマは分裂していくんだ。
そして「東ローマ帝国」は東西両方の正統な後継者であることを主張していく。
すると、「双頭の鷲」がローマ帝国の象徴となっていくんだ。
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後継者② 神聖ローマ帝国、オーストリア、ハプスブルク家

神聖ローマ帝国の国章

一方の「西ローマ帝国」は476年に1度滅亡。
その後、紆余曲折を経て「神聖ローマ帝国」が西ローマ帝国の地位を引き継いでいく。
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「皇帝はキリスト教世界の守護者である」
という理念が広まった。
双頭の鷲の中央に位置するキリストの磔刑図はその象徴。
翼の下のさまざまな国章は、帝国内で統治されている国家を表している。
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オーストリア帝国の国章
そしてその皇位はハプスブルク家が世襲するようになった。
なので「双頭の鷲」はオーストリアやハプスブルク家の象徴ともなっていく。
やがて神聖ローマ帝国が解体されたあとも、
ハプスブルク家は「オーストリア帝国」の皇位につくんだけど、
やっぱり「双頭の鷲」を採用しているんだ。
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後継者③ ロシア帝国

ロシア帝国の国章

ロシアのイヴァン3世は、東ローマ皇帝の姪を妃に迎えていることを根拠に、
「ローマの後継者」
を名乗るんだ。
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東ローマ帝国の中心・コンスタンティノープルに続き、
「モスクワは第三のローマである」
なんていう主張もあったくらいだからね。
ロシアはその広い領土が東西に延びていることから、
「①西のヨーロッパ ②東のアジア の2地域の正統な支配者である」
という意図も双頭の鷲に込めていた。
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ロシア連邦の国章
現在のロシアも双頭の鷲を国章に用いている。
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正教会

ギリシャ正教会の旗
教会の象徴としても双頭の鷲が用いられるようになった。
特に東方教会では、トップである「総主教」と皇帝のつながりが強かったことから、双頭の鷲のモチーフが見られる。
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対抗者

セルビア王国の国章
例えば、セルビア王国。
東ローマ帝国が衰退する一方、
「セルビア人とローマ人の皇帝」
を自称して、東ローマ帝国征服を企んでいた。
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セルビア共和国の国章

モンテネグロの国章
セルビアやモンテネグロの国章には「双頭の鷲」が採用されている。
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キリスト教、
ローマの対抗者……
いろんなところに「双頭の鷲」は広まっていったんですねえ。
まとめ
- 強さの象徴としての鷲が、ローマ帝国の象徴として用いられた
- 「ローマの後継者」を名乗る東ローマ帝国、神聖ローマ帝国、ロシア帝国などが「双頭の鷲」を用いた
- ローマ皇帝との結びつきからキリスト教の一派である正教会でも「双頭の鷲」が用いられている


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参考文献
- 宮下規久朗(2013)『モチーフで読む美術史』(ちくま文庫)