「御案内してください」「コメントください」は「敬語」なのか?│敬語の指針

こんにちは、はてはてマンボウです。

今回は……。

「御案内してください」

「コメントください」

は、敬語なのか……はて。

「ください」シリーズ。

敬語じゃなかったらなんなんでしょうか

実は、敬語には一定のルールがあるんだ。

そのルールに当てはめて考えてみると……。

梓

 

文化審議会答申「敬語の指針」

敬語については、文部科学大臣の諮問を通じて、
文化審議会が2007年2月2日に「敬語の指針」を公表しているんだ。
梓

文化審議会(2007)「敬語の指針」。

 

ほぁ。

ルールが決まってるんですねえ。

しかし、あんまり堅苦しいことばかり言っていると、

「言葉は時代と共に変わっていくものなのに、杓子定規だ!」
と批判されるんじゃないですか、はて。

たしかに、言葉というのはそんなものだとも思う。

一方で、このような飼料でもって、ざっくりとした敬語のルールが決められているというのも、また事実だ。

個人的には、他人の誤用についてあまり目くじらを立てない一方で、
自分自身が言葉を使うときには、一定のルールを意識しておきたいなと思うんだ。

「ここに書いてあることが全て絶対だ!」
とまでは言わないけれど、基本的な考え方を押さえておきたい、という方は、今回の記事をぜひ「ご参照ください」。

梓

尊敬語のパターン

まず、「くださる」に関して、「敬語の指針」に書いてあることを押さえよう。

「敬語の指針」には、「尊敬語」を作るためのパターンの一つとして登場する。

梓
尊敬語は、相手の立場を上げる言葉マボね!

謙譲語は、逆に自分の立場を下げるんでしたね。

出所: 筆者作成。

  • お(ご)……になる
  • ……(ら)れる(例:読む→読まれる)
  • ……なさる(例:利用する→利用なさる)
  • ご……なさる(例:利用する→御利用なさる)
  • お(ご)……だ(例:読む→お読みだ,利用する→御利用だ)
  • お(ご)……くださる(例:読む→お読みくださる,指導する→御指導くださる)

出所: 文化審議会(2007)、p.24より筆者作成。

つまり、
「お(ご)……くださる」というのが基本形。

ちなみに、和語(伝える、買う、など)では「お」を、

漢語+する(連絡する、購入する、など)では「ご」を使う。

梓

「して」が入ると謙譲語に

はて、そうなると……。

「ご案内してくださる」は、「して」が余計なんでしょうか。

そのとおり。

「敬語の指針」には、次のような記載がある。

梓

 

※「御案内してくださる」「御案内していただく」という表現について

「して」 を削除して「御案内くださる」「 御案内いただく」とすれば、

「お(ご) ……くださる」、「お(ご) ……いただく」という適切な敬語のパターンを満たすため(中略)適切な敬語となる。

出所: 文化審議会(2007)、p.31。

ほんとマボ。

しかし、
「御案内ください」と
「御案内してください」は、
何が違うんでしょうか?

「お(ご)……する」というのは、謙譲語なんだ。

だから、「私が先生を御案内する」というように、相手を立てるときに使う。

「先生が私を御案内して~」と言った時点で、先生が私を立てていることになるので、おかしい。

すると、「先生が私を御案内してくださる」全体もおかしくなっていまう

梓

出所: 筆者作成。

「田中先輩」がいれば解決!

というわけで、「御連絡ください」など、「して」を抜くのが無難なわけだが……。

「御連絡してください」が、間違いではないシチュエーションも存在する。

それが、「田中先輩」がいる場合だ。

梓
は、はてはて。
自分より目上の田中先輩が、
「先生を御案内してくださった」
場合は、

「御案内して」が田中先輩から先生への敬意を、
「くださった」が私から田中先生への敬意を表すんだ。

梓

出所:  文化審議会(2007)、p.31より筆者作成。

 

とはいえ、限定的なシチュエーションだね。
梓

「お(ご)……ください」か、「……(し)てください」

そうなると、「お(ご)……ください」だけを使っておけばいいわけマボかね。
「……(し)てください」も使っていいよ。

「案内してください」とか。

梓
はて?

さっきは、「してください」はダメだって言ってませんでしたっけ

「お(ご)……する」+「ください」が原則使えないというだけで、

「ください」自体は尊敬語を作る言葉だよ。

梓

 

出所: 筆者作成。

 

こうやって見てみると、違いが分かってきそうマボ。

ふむふむ……「連絡ください」や「御連絡をください」も良さそうに見えますけど。

それは「連絡する」という動詞+「ください」という補助動詞ではなく、

「連絡」という名詞+「下さい」という動詞の組合せで見ているからだね。

英語で考えると、少し分かりやすくなる。

梓
  • 「連絡する」という動詞+「ください」という補助動詞

……Please call me.

  • 「連絡」という名詞+「下さい」という動詞

……Give me a call.

 

漢語、つまり「確認」のような熟語は、名詞でも動詞でも使うことがあるから、このような分かりにくいパターンが出てきて、一瞬「おや?」となってしまう。

でも、これが例えば「証明してください」だと、「証明をください」とは言わないよね。

梓
たしかにマンボウ。たしかに。
これを和語で考えると、変だということがよく分かる。

例えば、「お伝えください」とは言うけど、「お伝えをください」とか「伝えください」とは言わないよね。

梓

 

感想を「コメントください」……?

そうすると、「コメントください」もどこかおかしいか分かるかな?
梓
コメント「して」ください、マボか!
あ、御コメントくださいは、でも変なような……。
「コメントする」という風に、「~する」をくっつけて動詞にするのは定着しているよね。

でも、「御」を付けるのは一般的じゃないかなその表現は使わない方がよさそうだ。

梓
奥深いマボねえ。
漢語の熟語も英単語も、海外からやってきた言葉だよね。

そして、名詞で使うことも、「~する」を付けて動詞で使うこともある。

そうなると、「連絡ください」とか「コメントください」という表現が生まれるのは分からないでもない。

でも、和語で考えると違和感が出てくるというのも興味深い現象だね。

梓

まとめ

  • 「~ください」を使うときは、「お(ご)……ください」か「……(し)てください」が基本
  • 迷ったら和語にしてみると、チェックしやすい

 

参考文献

  • 文化審議会(2007)「敬語の指針」。