円空仏鑑賞記|省略と抽象が生む温かみ、型破りな発想を探る

こんにちは、はてはてマンボウです。
2025年は何でも、不思議な仏像の展示があったとか。
2025年は、
三井記念美術館で「魂を込めた円空仏 ―飛騨・千光寺を中心にして―」
美術館「えき」KYOTOで「円空展 330年の祈り」
が開かれたんだ。

2つの展覧会で取り上げられたのは、円空(えんくう)の仏

梓
円空……はて。

十二神将(扶桑町、正覚寺)
出所:美術館「えき」KYOTO「円空展 330年の祈り」から一部抜粋(2025年10月23日確認)

 

にょわわ~これが仏像マボか!?
我々が思っている仏像の全く異なるイメージを打ち立てた唯一無二の仏像が円空仏なんだ。

今回は、その展示内容から奥深さを探っていこう。

梓

円空という仏師│彫り続けたそのワケとは

大森旭亭「円空像」
(高山市、千光寺)

円空は、1600年代に生きた江戸時代前期の仏師。
自身が修験僧でもあった。

円空は全国を旅しながら、生涯に約12万体の仏像を彫ったと言われている。
1日に1体彫っても300年以上かかる計算だから、この数字が本当に正しいのかは分からないけれど、
とにかく多作の仏師だったというのは間違いない。
事実、5,000体以上の円空作の仏像が見つかっているんだ。

梓
旅人で僧侶で12万体彫った仏師……いろいろ詰め込んできたマボねえ。
でもその背景には、
人々に仏の癒やしを届けたい
という思いがあったんだ。
梓

円空は諸国を行脚しながら、貧困や病苦に苦悶する人々からの依頼で、鎮魂と祈りを繰り返した。

そして諸人の安寧を祈りつつ、庶民の心を映し出す”かたち”として仏を残した。

それが円空の仏像である。

三井文庫 三井記念美術館編(2025)『特別展 魂を込めた円空仏』。

円空にとっては、仏像を彫ることは祈りそのものだったんですねえ。

円空仏の特徴

素朴のその奥に……

円空仏の特徴は、なんといってもその素朴さ。
そして、温かな表情にある。
梓

両面宿儺坐像(高山市、千光寺)

如意輪観音菩薩坐像(高山市、東山白山神社)

出所:三井記念美術館「魂を込めた 円空仏 ―飛騨・千光寺を中心にして―」(2025年10月23日確認)

 

たしかに、普通の仏像とはまた違った、不思議な温かみがありますねえ。
円空は1660年代から彫り始めていて、その初期から既に省略したスタイルの萌芽が見られる。
ただし、それも晩年ほど大袈裟ではなく、最初はまだ繊細な仏像も彫っていた。

やがて、その仏像には、温かみのある眼差しや、柔らかい微笑みが備わっていくようになる。

梓

(左から)毘沙門天/観音菩薩/不動明王(尾張旭市)
出所:美術館「えき」KYOTO「円空展 330年の祈り」から一部抜粋(2025年10月23日確認)

 

一本線で描いたような目なのに、不思議と人を安心させてくれますねえ。

十二神将と護法神、ユーモラスな仲間たち

冒頭で見せてくれた十二神将もおもしろかったマボねえ。

 

申年はちゃんと猿っぽい顔立ちに見えるのが、またおもしろいよね。

他にも、犬を表す戌年の神将は、まるでサンダーバードのトーテムポールみたいだよね。
しかも、剣まで平面で表現している。簡略化の極みだ。

梓

 

狛犬(一宮市、長福寺)
出所:美術館「えき」KYOTO「円空展 330年の祈り」から一部抜粋(2025年10月23日確認)

狛犬もいいマボねえ。
怒ってるようで、なぜか愛くるしいマボよ。

型破りな構成と素材への逆発想

 

不動三尊(名古屋市、長養寺)
出所:美術館「えき」KYOTO「円空展 330年の祈り」から一部抜粋(2025年10月23日確認)

はて!
何マボか、この階段みたいに配置された仏像は!
普通は横に並ぶものでは?
これぞ型破りの発想。

素材の扱い方も独特だよね。
特に西洋の彫刻は「素材を人の形にしていく」という感じ。
いわば、素材を従わせている。

だけど、円空は木の形に合わせて仏を生み出している
自然に寄り添い、木そのものの姿を活かすアプローチだね。

梓

削ぎ落としの芸術

薬師如来立像(飛騨市、薬師堂)

出所:三井記念美術館「魂を込めた 円空仏 ―飛騨・千光寺を中心にして―」(2025年10月23日確認)

円空の手にかかれば、薬師如来を表すツボも省略されたデザインとなって、ちょこんと両手にかわいく置かれる。
梓
表情も含めて、抽象化されているおかげで、
普通の如来の厳かな雰囲気の如来像とは違って、
ついつい近づきたくなる仏さまマボねえ
思うに、円空仏は省略のおかげで、本質を浮かび上がらせている。

そこにユーモラスさや型破りの構成が加わり、唯一無二の世界を作り出しているんだね。

梓

 

参考資料

  • 三井文庫 三井記念美術館編(2025)『特別展 魂を込めた円空仏』。