『絵を見る技術』で「オフィーリア」を見よう!

こんにちは、はてはてマンボウです。

今回は、『絵を見る技術』の記事の続きです。

 


 

 

 


 

前回の記事から着目しているのは、『絵を見る技術』
梓

 

 

秋田麻早子(2019)『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』、 朝日出版社。https://amzn.asia/d/24Y1fmB

 

今回は、「バランス構成」に着目しながら、
ジョン・エヴァレット・ミレイの『オフィーリア』
を見ていこう!
梓

ジョン・エヴァレット・ミレイ『オフィーリア』

(テート・ブリテン美術館、ロンドン)

『オフィーリア』は、

シェイクスピアの戯曲『ハムレット』の登場人物。

彼女がデンマークの川に溺れてしまう直前のはかなさが描かれた美しい絵画なんだ。

梓
まぼ!
この絵の見方が分かるようになるんですね、楽しみです!

なお、この記事は、
『絵を見る技術』を見ながら、
筆者が絵画を鑑賞したものです。

『絵を見る技術』でこのような紹介がされているわけではなく、
あくまで筆者がこのように絵を見た、
というものですので、ご承知おきください!

 

シーソーでバランスをとる

『絵を見る技術』で説明されている要素の1つが
「バランス」。
梓
バランスですか……はて。
でも、『オフィーリア』って、ぱっと見ると左右非対称ですよね。
それなのに、沈みそうで沈まずに浮いているような……
名画は、左右が非対称だったとしても、うまく重みづけをしてその調和を図っているんだ
梓
ほうほう。
まずは左右を比べてみよう。
それに、オフィーリアの下半身のドレスで一番目を引くのは、

ドレスの一番端の植物が集まっている部分
量感としてはあまり重くないはず。

梓
たしかにマンボウ。

でも、絵のフォーカルポイント(焦点)になるのは、オフィーリアの顔ですよね。

お、よく気付いたね!
梓
『絵を見る技術』に書いてあったマボよ~ひょーひょっひょ。

特に明るく照らされている顔はフォーカルポイントになるんですよねえ。

しかし、それなら顔の方が重たく見えて、川に沈んでいくような印象になるはずですよねえ。

それなのに、絵全体が左側に傾いて見えないのはなぜマボか?

それは、右のドレスと左のオフィーリアの顔をシーソーで考えると、うまくバランスが取れる箇所に位置しているからなんだ

梓
ちょうどオフィーリアの腰の辺りがくびれて、支点になっている。

そう考えると、顔の比重が重たくても、これが支点に近ければ、
うまくバランスをとることができるんだ。

梓

川の流れとの循環

オフィーリアの身体が、川に流れていかず、浮いているように見えるのにはほかにも理由がある。

画面左を縦に伸びる草が塞いだり、

左上が茶色く草木でおおわれていたりと、

鑑賞者の視線が左側に逃げるのは塞がれている。

一方、右下側を塞ぐものはないから、川が右に流れているのは自然と感じられる。

梓
たしかにマンボウ。
その一方で、

右上の植物の花は左を向いており、

川の流れに逆らいながらオフィーリアの顔に戻ってくるようになっている。

これが、絵全体をバランスさせているんだ。

オフィーリアの顔自体もあごが浮いて左側に引っ張られるような力が働いている。

梓

 

はて!
線の組み合わせがこんなに効いてたとは。
草木も視線のガイド役になっていたんですねえ。

手前がなくなると……

絵の中心はオフィーリア。
だけど、周りの草木が役に立っているという話をしてきた。

これについては、周りの部分を取っ払ってしまうと、もっとよく分かるんだ

梓

 

左側の草がなくなると、オフィーリアがどっち側に流れているのか、分からなくなりますね、はて。
それに、なんだか沈んでしまうような感じが強まるよね。

手前の岸がオフィーリアを支えていた、ということが分かる。

梓

 

はて〜、前後関係まで考えるとバランスの仕組みがさらに立体的に見えてくるマボ!
ちなみに、手前の岸辺や水草を挟んでオフィーリアを眺めることで、
なんだかこのシーンを盗み見しているような気持になる効果もあるよね。

こんな風に、「絵の一部分がなくなったらどうなるんだろう?」を考えて絵を見るのも楽しいよ!

梓
ただのきれいな絵じゃなくて、こんなに多層的にバランスを設計していたとは……驚きでした!

まとめ

  • 左右非対称でも成立:支点と左右の重みづけの釣り合いが重要
  • 視線を自然に誘導するような導線の仕掛けがある
  • 奥行きの構造が空間的に安定を支えている。

 

 

参考文献

秋田麻早子(2019)『絵を見る技術 名画の構造を読み解く』、 朝日出版社。